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2009年 07月 29日 ( 1 )
白衣の天使さんに、戻れない
10年という、決して長くはない時間。

だけど、それは莫大な時の積み重ねで、正直、苦しかった。

とっても、楽しかったし、大好きだったし ・・・

仕事としてのやり甲斐は、あり過ぎるほどで ・・・

それでも、いつも思ってた。

 この仕事を辞めたら、2度と同じ職業には戻らない

スコットランドに来てから 看護師の仕事をしたら良い と、

どれだけ多くの人々に言われて、勧められてきただろう。

 でも ・・・ 戻れない

 戻らない


看護師という職業が、果たして自分に、向いていたかなんてわからない。

ただ、ずっと仕事をしていて、苦しんでいたのは確かなこと。

色々な病棟でも、色々な外来でも、働いてみた。

けれども、その白衣(時にはピンク衣 うっふん) が苦しかった。

大きく分けて、その理由は 2つ で。

きっと、看護師の誰もが抱えている気持ちなのだろうけれど ・・・

私には、それが苦しくて辛くて、慣れなかった。
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 ひとつ : 責任の大きさに、怯えていたこと 

根本的に、自分に自信がない自分。

そんな自分が、人の命を、その手に握っている という現実。

 この血液に入れる薬剤を、本当に、私が打って良いんだろうか?

 患者さんの症状を、本当に朝まで様子を見ると言う判断で、良いのか?

 医師から聞いた薬剤の単位は、確かに、この単位なのだろうか?

 設定した点滴の速さは、あれでよかったのだろうか?

 急変した患者さんの、何かサインを、私は見落としたんじゃないだろうか?


とにかく、あれもこれも、心配で心配で、不安で不安で。

仕事が休みの日でも、夜に眠っていても、湯船に浸かってても、

常に考えている、想像している、眉間に皺を寄せている。

重ねての確認を何度したって、まだ自分の持つ注射器の内容を疑ってしまう。

その 自信のなさ が、患者さんに知られてはいけない。

同僚に、伝わってもいけない。

とほほ ・・・ な自分自身との、孤独な戦いだったと思う。
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 ふたつ : 患者さんへの感情移入ということ

おなじ人間だもの、時間を共に費やせば、感情が生まれるのは当たり前。

それは、わかってはいるけれど ・・・。

こんな自分(到底、自信喪失で悩む看護師さん)を頼る人の気持ち。

精神的な支えなど、この自分(結局、だだ漏れシッコたれ)にでき得ない。

それでも、何か、どういう形でか、職業を抜きにして付き合いたい。

けれども、所詮は病院の中での、白衣の時間。

看護師という立場と、1人の人間という立場の線引き。

 頼ってくれる子供は、慢性疾患で何年も入院をしている。

 その子の心なんて、自分に何がわかるものか ・・・。

 気持ちをポツリ伝えてくれるお婆さんは癌の末期で。

 その人の歩いて来た道程の重さを、どう抱えたら良いのだろうか ・・・。

 幼い息子2人を抱えるお父さんは、短い命のことを知らされていない。

 他の誰もが、他人までが知っていることを、彼だけが知らない。

 そのお父さんと、家族の間に立ちふさがってしまい、言葉をなくす ・・・。


実に、私は不器用でプロらしくない、感情的で弱い人間だ。

チームで働きながらも、心は独りで勝手に動き出し、溢れてばかり。

辛い患者さんの目の前で、眉間に皺を寄せて当惑する白衣だった。

 私は、2度と人間の看護師には戻らないつもり

今も、ずっと勤務を続けている同級生や友、元同僚を、尊敬している。

 あぁ ・・・ 良いなぁ ・・・ 良い仕事だなぁ

と、とても憧れもする。

看護師になりたい、という人がいれば、唾を飛ばして応援したい。

仕事には、どんな仕事にも、責任や苦しみ、葛藤はあるもの。

それも、わかってはいたけれど ・・・。

 けれども、やっぱり戻れない。

 戻らない。

 大好きだったけど。

 怖かった。

 苦しかった。

 辛かった。

 でも、大好きだった。

 白衣の堕天使。


白衣の堕天使の 素顔 ・・・
by yayoitt | 2009-07-29 03:51 | 看護婦時代 | Comments(19)