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天城越え
きっかけは、高校1年生の時に見た映画だった。
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                天城越え
         (1983年 松竹 松本清張の小説から)

14歳の少年とある娼婦が、天城峠を旅している時に起きた殺人事件。
当時、怪しまれて牢獄に入れられたのは、その娼婦だった。
しかし、何かおかしいと30年間、事件を追い続けた老刑事。

時空を越え、物語は行ったり来たりする。

母親に裏切られ、静岡にいる兄を訪ねる為に、独り天城越えの旅に出た少年。峠の途中で、素足で旅するハナという女性と出会い、共に並んで歩き始める。だが、道中、旅の資金を手に入れる為に、行きずりの男に声をかけたハナ。無理やり少年と別れたハナの後を、密かに追った少年は ・・・ 
草陰で情交を重ねる二人の姿を目撃してしまう。

殺人事件で殺されたのは、その男であった。


テレビで見たこの映画に私は、文字通り、心を奪われてしまった。

ドキドキしながら本屋に走り、松本清張の原作 天城越え を買った。

自分の鼓動を聞きながら、一晩で読みきった。

その夜から、思いを重ねて来た場所が 旧天城トンネルのある天城峠 である。

自ずから 伊豆の踊り子 も読み返し、初めて読んだ時とは違った情景を浮かべたもの。

            いつか、行きたいんだぁ ・・・

      いつか、あの天城峠を、自分で越えてみたいんだぁ ・・・


そして、看護学校2年生の夏休み、両親にお願いをして、一人旅をさせてもらうことに。

足を運んだ旅行会社で、希望通りに宿を予約してもらい、列車の切符を準備してもらった。

中伊豆は 湯ヶ島温泉 の、国道414号線に面する小さな民宿に連泊しつつ、すぐ近くから出ている 天城峠 を 湯ヶ野温泉 に向けて独り、歩いた。

寂しい小雨の降る峠では、誰とも出会わなかった。

何時間も歩き、念願の 旧天城トンネル に出会った時、心も身体も震えたんだった。

峠の途中で度々、開いて読み返したのは、松本清張。

湯ヶ野温泉では、川端康成が滞在して執筆をし、伊豆の踊り子の舞台にもなった 福田屋(旅館) で立ち尽くした。

清らかな川のせせらぎを聞きながら、目を閉じると、様々な光景にまた ・・・

ブルブル って震えたものだった。
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今でも、思う。

もう一度、あの場所に戻りたいと。

だけど、若い青春の日に感じた、あの感動は、繰り返せはしない。

きっと、二度とは戻らない方が、良いのかもしれない。

そんな場所、そんな旅が、あるものだ。
by yayoitt | 2008-01-22 06:44 | 遠くにて思う日本
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