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小さな脳みそ、大きなハート、記憶は永遠
病院のオフィスには、看板インコの チャーリー がいる。

今日、チャーリー の飼い主さん、96歳の女性 が、専属看護師に手を引かれて、チャーリー に会いに来た。

いつも、キャビネットの上に置かれた チャーリー の鳥かごを机の上に降ろして、隣に椅子を置き、彼女を座らせた。

痴呆が少し進んで、獣医師が誰かもわからなくなっていた彼女。

椅子に座ると、目の前の青い美しいインコを見つめて、語り始めた。

 “ 私の坊や、チャーリー、私だよ、わかるかい? ”

すると、それまで反対側の止まり木に佇んでいた チャーリー が、彼女の顔のすぐ近くの止まり木に飛び移って、

ジッと、耳を澄ましたのだ。

オフィスでは、いつも、人から見られることに緊張している チャーリー 。

その彼が、自ら彼女の側に佇み、首をひねったりして、ジーッと聞いているのだ。

周りで様子を見ていた私達は、その光景に、余りにも驚いてしまった。

驚いて、でも、心が打たれて言葉を失った。

 “ おお、チャーリー、ごめんね、私はもう、おまえを連れては帰れないんだよ ”

チャーリー は、首を反対側に傾げて、小さな瞳でずっと彼女を見つめている。

 “ 私が食事する間いつも、私の肩の上で、過していたものだよねぇ・・・ ”

彼女と チャーリー の背後から、厚い雲の切れ間を縫って太陽の光が差し込んだ。

10分もそうして語り合うと、心を通わすと、彼女はまた、看護師に両手を引かれて、1人暮らしの家へと帰って行った。

今まで見たこともない、美しい光景に、まだしばらく私は、採血の為に連れ出した仔犬を両手に抱えたまま、動けずにいた。

他のスタッフも、感激の余りに、両目に涙を浮かべていた。

ある春の午後の、余りに切なく美しすぎる光景に、やっぱり言葉を失っていた。
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by yayoitt | 2007-04-18 02:31 | 愛する動物のこと
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