マイケルが日本で暮したのは、合計3年半 であった。
最初の2年は京都で、2度目の生活は私の故郷(人口2万弱の小さな町)である。 彼が言う日本での暮らしは、一言で言うとこうまとめられる。 何年住もうが、この西洋人(白人)の顔を持つ限り、僕は一生ここではお客様 “ どれだけ住んでいても、日本語が流暢に喋れるようになっても、日本人からは、他の日本人が受けるような対応は絶対に受けられない。 いつも特別扱いで、丁寧に扱われたり、それを心地良く思えれば良いんだけど、僕には無理だ。 僕は、人間と人間の同じ目の高さでの付き合いがしたいのに、それが悲しい。” 彼と故郷で生活していた頃、田舎の町で彼は、ちょっとした 有名人 になってしまった。 ビーグルとよく歩いている外人さん と、呼ばれていた。 どこにいても何をしていても、立っているだけで人が見る、こっそり見る、そのくせ視線を逸らして無視をする。 それを毎日毎日、歩く道々、揺られる汽車の中、働く病院の廊下で常に感じていた。 彼の願いは単純だった。 ・・・平等に扱って欲しい 罵声を浴びたり喧嘩を売られるとか、そういう危険で恐怖を感じるような差別ではないし、受ける人によってはきっと心地の良いものかも知れないが、マイケルは私がここで感じる差別と同じ気持ちを抱いていた。 ・・・自分自身の存在を無視されているような気持ち 違うもの として見られて扱われること。 例えをあげると ・・・ スーパーに私と買い物に行くと、マイケルが財布を取り出してレジの女性にお金を払っているのに、女性はマイケルとは目を合わせずに、隣にいる私の目を見て私にお釣りを渡し、お礼を言う。 とても頻繁にあったので、その度にいつも彼は腹を立て、楽しい1日を台無しにしていた。 レジの彼女が、彼を無視した理由は、正直わからないでもない。 恥ずかしいし、英語で話されたらどうしようとか、英語でお礼を言わなくちゃならないんだろうか、とか、困ってしまって仕方なく、日本人の私にお釣りを渡したりしたんだと思う。 しかし、マイケルにとっては、完全に彼の存在を無視された という傷が残るのである。 蒼白で鼻が高くて緑の目を持ったのっぽは、どこにいても目立ったし、周りの人々は彼を、はやし立てるか、避けて通る。 高校生の団体は、彼に聞こえるようにわざと大きな声で、急に英単語を会話の中に入れてみたりして彼の反応を見たりする。 新しい日本人との出会いがあると、同じ質問の繰り返しだった。 “ 箸を使うことができるの? ” “ 寿司は食べれるの? ” 彼はいつまで経っても、箸が使えて寿司も食べられる外国人 でしかなかった。 日本での人間関係を語る時、彼の中には2つの相対する感情が湧く。 差別する日本人に対する嫌悪感 と それは差別の表現だけれども、彼らの親切さへの感謝 その狭間で、彼はずっと苦しんでいた。
by yayoitt
| 2007-02-05 03:43
| 英国暮らしって...
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