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この手、あの手
木曜の動物病院、私が担当した犬は、Neapolitan Mastiff (ナポリタンマスティフ)
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平均体重50-68kg高さ65-75cm のイタリアはナポリの街の名を持つ犬種。

彼は体重が 68.8kg で、身体の大きなマスティフにしては高齢となる 6歳 。

耳を痒がると言うことで、今回は麻酔導入剤を使用して耳の診察と丹念な掃除にやって来た。
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身体の大きさに、また、もともとのマスティフという犬種の性質に比べて、この犬種はとても優しくて穏やか、だがとても忠実である。

この彼もそれに漏れず、ぐいぐいと私を引っ張るでもなく、私に従い歩き、思い切り体重計に乗るのを怖がったあげくにようやく体重を量らせ、診察室では私の側で、ただただ緊張の唾液を垂らしては耳を振っていた。

耳を振るたびに、大きく垂れた口から、溜まった唾液が当たり一面に散らばる。

また、顔を近づけると、私よりも断然大きな顔を素早く向けて、ベローーリと舐める。

麻酔導入剤を直接血管内に注射する為に、大きな身体を何とか抱きかかえる。

彼はこちらを振り返って、真剣に必死に彼を抑える私の顔を、ベローーリと舐める。

血管内の注射は、短時間で確実に効果を表すので、私はずっと傍らにいた。

彼の4つの大きな足が、ゆっくりゆっくり滑って、滑って、開いて ・・・ ドスン

鼾(いびき)をかき始めた彼の横で、床に私も胡坐をかいて座り、しばらく背中を撫でていた。

彼の4つの足 ・・・

その大きさ ・・・

でっかいなぁ ・・・

そっと自分の掌を、彼の手の上に重ねてみた

すると、ピッタリ、同じ大きさだった

こんな大きな身体を支えるのには、大きな手足が必要だ。

この大きな手足と盛り上がる肉球で、硬い地面を堂々と歩くんだ。

あったかな彼の手の上に、自分の手を重ねたままいると何となく、彼が覚えてきた光景や音や楽しさや幸せが感じられる気がした。
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  ・・・

翌日、手術の担当をしたのは、ロングヘアーのChihuahua(チワワ)
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片手でその、震える身体を包むことができる彼は、手術台の上で小さな手足を投げ出した。

その手を自分の手に取ってみた。

小さく震えてばかりの彼の手は、私の親指と同じ大きさだった

この小さな身体が愛しまれるのにとてもよく似合う手足だ。

この手足と、柔らかな肉球は愛されてはキスをされるんだ。

ほんのりあったっかくて軽い彼の手を私の親指に乗せると、ただただ湧き上がる果てしない愛しさを感じるばかりだった。
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あなたの手に、私の手を重ねた時そこに、いったい何が 見えるのだろうか・・・。
by yayoitt | 2007-01-20 18:42 | 動物病院での出来事、仕事
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