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Kiri と Pebble
月曜の午後、いつもの慌しさの中、一本の電話。

 “ どうやら迷い猫みたいなんだけど、週末からうちにいるんだよ。

   朝からずっと色々電話しているけど、どこにも迷子猫の届出と一致しなくて・・・。

   黒の縞で、黒い首輪にピンクの飾りが付いてるよ、多分、雌じゃないかって・・・
。”

迷い犬猫、帰ってこない犬猫などの情報は、一冊のノートに詳細がまとめてあるので見てみたが、一致するのは無かった。

病院で一番の猫好きの看護師が、電話を代わって話を聞いてくれた。

彼女は、猫が迷ったり居なくなったのを聞くと、どうしても放っておけない優しい女性だ。

 “ 何とかその猫を病院には連れてくることは?

   運ぶカゴがない・・・そうだよね・・・じゃぁ、私が仕事帰りにそちらに行って、マイクロチップ   が埋め込んでないか調べてみましょう
!”

そういう訳で、同僚のアンジェラが、マイクロチップを読み取る機械を持って、仕事の帰りにその女性の家に向った。

結果は ・・・ 幸運なことに、マイクロチップが埋め込まれていた!!

飼い主の名前、連絡先、全てわかった。

なんて ラッキー なんだろう!!

・・・ と、思っていたのはほんのしばらくの間だった。

この、マイクロチップがきっかけで、多くの涙を誘うことになってしまった。
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結果を先に言うと、こういうことである。

この猫は現在 8歳の雌、マイクロチップを埋め込まれたのは 7年以上前 で彼女が 子猫 の頃だった。

そしてその7年前に、この猫は 行方不明 になってしまい、それっきり 当時のご主人A は、彼女の姿を見ることがなかった。

ところが、先週のある午後、この ご主人A が仕事である通りを歩いていたら、7年前に別れて諦めていた自分の猫にそっくりな猫を見かけたらしい。

でも、黒い首輪にピンクの飾りが付いてるのを見て、まさか自分の猫ではないだろう、と思ったそうだ。

そう、当時いなくなった猫には、黒い首輪もピンクの飾りも付いてはいなかった。

すると、金曜の夜に 動物病院の看護師アンジェラという女性から、お宅の猫が見つかりましたよ、と電話がかかってきた。

しかもその週末、猫を発見してくれたお宅は、ご主人A が先週に歩いていて猫を見かけた同じ通りにあり、その猫 はまさしく自分の猫だったのだ。

7年ぶりに、諦めていた頃にひょっこり現れた猫、彼女の名前は Kiri 。

7年間、一体どこでどうしていたんだろう?この首輪は一体??

そう思っていると、 Kiri を発見してくれたお宅に、他の動物病院から電話が入った。

 “ さっきお電話くださった迷いネコちゃん、飼い主さんが探しておられます、今、問い合わせの電話があって、黒の縞で黒い首輪でピンクの飾りが付いた猫だということですが・・・ ”

同時に、もともとの飼い主A と、その後の7年間の飼い主B が見つかったのである。

とりあえず、猫はうちの動物病院で預かり、今朝、飼い主A と 飼い主B が病院にて顔を合わせる約束を取り交わした。

                    そして今朝 ・・・。

7年ぶりの再会の涙に暮れる女性と、一方で、7年間の別れの悲しみの涙に崩れる女性。

Kiri は7年間 Pebble という名前で、ある家族にとても愛されて育って来た。

そして、今、元の飼い主の所へ、再び Kiri となって帰ることとなった。

7年間、Pebble を愛した飼い主家族は、一度もワクチンの注射や健康チェックに病院に連れて行ったことはないらしく、ブラッシングもしてなかったようで毛も固まっていた。

そのことを、本来の飼い主Aは不満に思ったと言っていたが、何よりも大事なことは、彼女が一杯一杯愛されていたという事実。

今週の土曜日まで Kiri を病院で預かり、身体検査をして飼い主の元に返すこととなったが、Kiri はとても人懐っこくお喋りで、本当にかわいらしい猫である。

それで終わったかな?と思っていた今日の夕方、ある男性 が現れた。

7年間 Pebble と暮らして来た飼い主(今朝、別れを告げた女性)のご主人、Mr.Bであった。

彼は、顔を引きつらせてこう言った。

 “ 元飼い主の連絡先を教えてくれとは言わないので、どうか、病院の方から元飼い主に電話をして、Pebble のことを諦めてくれと、頼んで下さい 

そして付け加えた。

 “ 本当に愛してる猫なんです、特にうちの息子はずっと Pebble と育ってきたから、もしPebble がいなくなったら・・・ ”

白いシャツ姿の男性は、悲しみと憤りで顔を紅潮させていた。

私達は、今週末に元の飼い主が猫を迎えに来た時に、Mr.B の電話番号を渡してメッセージを伝える、ということだけ約束し、あとは立ち入らない、と決めた。

肩を落として去っていく Mr.B ・・・。

                      ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

                       迷い犬、迷い猫・・・

                 それを見つけた人はどうすべきか?


迷い犬、迷い猫などのペットは、あくまでも 落し物 として扱われるべきである。

見つけたら届けなければならない

落とし主を見つける為の努力を強いられる。

それは、病院にてのマイクロチップの確認、警察に届けるや、最寄の保護施設に届けるなどである。

 ・・・ 今回、1匹の猫を巡って、数人の人が心を痛めて涙し、幾人かの人が喜びの涙を流した。

Kiri から Pebble へ、そして再び Kiri に戻った猫 ・・・ いつでも、誰であっても、とっても愛されていたのは 真実 である。
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by yayoitt | 2006-07-24 02:40 | 動物病院レポート ケースから
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