人気ブログランキング | 話題のタグを見る
愛しの So In Love 
その名曲は So In Love

1948年、コール・ポーター作曲。

ミュージカル Kiss me, Kate の劇中歌。

ジャズのスタンダードナンバーとして定着した。

これをクラシック音楽風にアレンジしたモートン・グールド楽団の演奏。

それが、私の幼い記憶として、ずっとずっと長年、流れ続いている。
愛しの So In Love _c0027188_661138.jpg

日曜の夜。

苛められっ子だった子供。

長いものに巻かれるのだけは嫌で、そのくせ、よく泣く子供。

銭湯の湯船で、泣く子供。

 学校がいやや … 

日曜の朝になると、24時間後には学校にいる自分が惨めで、また泣く。

この音楽は、その頃の 感情 と重なる。

それが、日曜日の夜の、もう寝なければならない時刻に流れると。

明日からの5日と半日のことを想像して、泣きそうになる。

と同時に、少しだけ勇気も湧いてくる。

強くなれる気がする。

今という時間が過ぎ去り、きっと未来に良いことがあると思えてくる。

母は洋画が大好きで、この2時間は欠かさず、座布団の上にどっかり座った。

私も、この2時間は 何もかも忘れて映画に没頭 できた。

その楽しみの2時間が終わり、この音楽が流れる。

まだ小さな身体の、どこからか震えが起こる。
愛しの So In Love _c0027188_67046.jpg

それは 感動

そして 怯え

少しの 絶望

振り切っての 希望

その音楽は、数秒であったけれども、心と身体を流れた。

淀川長治が言う。

 さよなら さよなら さよなら 

心の中で応える。

 また来週まで、さよなら、おじちゃん

 がんばるでな、嫌やけど、来週までまた、頑張るでな
 

すると、流れるのである。

日曜洋画劇場の、エンディング。

子供の頃の思い出は、切ないものが多い。

そこに流れる音楽は、いつまでも記憶と共に生き続ける。

苛められるのが辛くて、でも逃げ出す道を見出せなかった子供。

苦しい時間の中で、それなりに人と生きることを学んだ子供。

単純なようで、とても複雑で頑なな子供の心。

そこに、入り込む音楽と感動。

それは、その人の一生に左右することもある。
by yayoitt | 2011-02-11 05:26 | 思い出
<< 雨降り後と、春の香りに、ノーマ... 最初の覚悟 >>