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恐怖の宿 あるホステルの話
沢山の方々からの やっこ素泊まり宿 への助言、ご意見、ご感想など頂き、本当にありがとうございました。

コメントに返事をしながら ・・・ 突然、寒気が私、いたしました。

なるべく思い出さないように、忘れよう、忘れよう、と思っていた経験。

もやぁ~ と蘇ってきてしまいました。

思い出すと、眉間に皺がごっくり寄り、立ち止まってしまう。

そんなことがあったのは ・・・

             ある ホステル の話

9年前、私とマイケルは、スコットランドに移住する為、日本を経った。

日本を出て、3ヶ月ほど東南アジア旅行してからスコットランドに入る計画で、

オーストラリアはメルボルンに一度帰り、それからシンガポール、マレーシア、バリ島を旅行することに。
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その、シンガポールで一泊した ホステル のこと。

シンガポールは、マレーシアに移動する途中で、物価が高いのこともあり、この一泊はとにかく安い宿を探して宿泊。

そこで見つけたのが、街の中心地にあるインド系のホステル。

階下はインド料理店で、その2階から上が宿になっていた。

トイレとシャワーは、幾つかの部屋には備え付けがあったけれど、殆どが共同。

部屋を選ぶ時に、私のわがままで、部屋に備え付けてあるものを ・・・。

部屋までの廊下では、靴が転がり、ベタベタと濡れていて、何となく嫌な予感。

私は 濡れている床恐怖症 があるので、靴を履いていても爪先立てで歩いて行った。

そして、渡された鍵で開けた部屋 ・・・

開け放たれた窓、シーツの色も柄も全て違うダブルベッド、埃を噴出す扇風機。

ベッドメーキングなどはされていないので 今朝まで誰か寝てた? という感じ。

そして入り口左手に、壊れたドアがあり、シャワーとトイレが。
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段差のない床伝いに、トイレが奥、その少し手前にシャワーが付けてあるので、シャワーを出すとトイレも全て濡れる仕組みに ・・・ 

一晩だけだと腹をくくり、大きなリュックを床に置いて、立ち竦んでしまった。

 ベッドに上がりたくない

 かと言って座る椅子もない


これは、シャワーを浴びて寝るしかないと、恐る恐る服を脱ぎ、脱いだ服をどこに掛けておくかしばらく悩み ・・・

裸足の爪先立ちでトイレシャワーへ ・・・

シャワーを出し始めたら、案の定、トイレがベショベショに濡れ、そのトイレを丸ごと洗い流した水が足元を流れて行く。

除水溝は、1つあるけど詰まっているので、どんどん水が足元深く溜まって行く。

  あああああああああああああああああああっっっっっっ

目をつぶり、必死に考える ・・・ 妄想する ・・・ 

 これは足湯 ・・・ ここはピカピカトロピカルバスルーム
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タオルの備え付けなど無いので、持参していたフェイスタオルで拭きながら、壊れたドアを開けてバスルームを出た。

マイケルがベッドに横になっていたが、苦笑いをして指を差した。

彼が指差す室内の床を見ると ・・・

  あああああああああああああああああああっっっっっっ

バスルームと部屋の床にも段差がない為、
トイレを丸ごと洗い流し、私の身体を洗い流し、そしてバスルームの床を洗い流し、
詰まった除水溝を溢れた水が ・・・ 水が ・・・ 部屋に溢れ出ていたのだ。

私のサンダルが浮いている ・・・ マイケルのサンダルも浮いているぅ ・・・

泣く泣く、仕方なくなく、ベッドに這い上がると ・・・ ジトリとする。

  あああああああああああああああああああっっっっっっ

 なんか、なんか、シーツがジットリしてるうううううううう

 寝るしかない、寝て全てを忘れるしかない!
 

とその夜は、とにかく 必死に 寝ることに。

バンコクに1年住んでたマイケル、ちょっとやそっとの場所では弱音は吐かないが、さすがに何かを感じたらしく、同じく早々眠ることに。

                 真夜中 ・・・

ポリポリ

むずむず ポリポリ むずっっ ポリポリポリ 

髪の毛が首の辺りに、むずむず触れて痒さで目が覚める。

そうすると、体中が痒いことに気が付く。

むずむずむず ポリポリポリ 

自分で自分に言い聞かせる。

 ノミとかダニとかがいるって勝手に想像して痒くなってるんだぁ ・・・ 

 ここは、素敵なベッドルームの洗いたてのシーツの上よっっ ・・・

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眠れぬ長い長い夜が、ようやく ・・・ 明けた。

なるべく触れていない所には触れないようにしてベッドに座り、服を着替えた。

マイケルがシャワーを使っている間に、どうしてもトイレに行きたくなってしまった私。

 ど、ど、どうしよう ・・・

 あっっ。共同のトイレが、あったっけ!

 あそこなら、トイレだけだし、シャワーと一緒じゃないから床も濡れてないはずっっ!


と、昨日の記憶を辿って廊下を歩き、共同のトイレに来た。

  あああああああああああああああああああっっっっっっ

シャワーもないのに、床も便座も濡れている ・・・ 

ペーパーはもちろん、ホルダーには掛かっておらずに、床に転がっているから濡れている。

                 しかもっっ

ドアの鍵が壊れてるし、ドアを閉めても大きな隙間があって、便座に座ると廊下が見える。

ってことは、向こうからも私が便器に座ってる姿が見える。

   あああああああああああああああああああっっっっっっ
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 それでも腹に背は代えられない ・・・ 

 どうか誰も通りませんように ・・・ 

 誰も来ませんように ・・・
 

なのに神は ・・・ 見放した
by yayoitt | 2008-02-29 05:47 | 思い出 | Comments(21)
おっきい姉ちゃんに、おくる ・・・
掛け慣れた電話番号 ・・・ もう、通じない。

京都 という場所に赴いても、そこにはいない。

共に育った 飛騨 の町。

私が小学生3年生の時、彼女は京都に旅立ち、それからずっと ・・・。

おっきい姉ちゃんは、まるで他所(よそ)のお姉ちゃんになってしまったみたいで寂しかった。

飛騨にいた時間の、その倍以上の時間を家族を設けて京都で過ごした彼女。

彼女に憧れて看護師の道を、私は選んだんだった。

仕事で殆ど家にいない旦那さん、厳しいお姑さんと娘2人の世話をし続け ・・・。

彼女はよく言っていた。

 誰もいない独りの部屋で、沢山のスペースを持て余して暮らせたらなぁ

家族の世話と、フルタイムの仕事と、犬と病気の猫を見守ってきた彼女。

ある時、彼女の夢が叶う日はやって来た。

大人になった娘2人は、まるで友達のように彼女を慕う。

一人暮らしのマンションで、彼女は愛する犬と沢山のスペースを持て余し ・・・

そして、ちょっぴり寂しくなった。

何かを変えたいと、寂しいと思い続ける自分は、このままではいけないと ・・・

彼女は、その決心を固める心を確信する為に、私の所にやって来た。

日本を離れて暮らした3週間は、何を彼女に伝えたのだろうか。

彼女はもう、京都にいない。

数日前に、迷い続けた決心で、愛する犬と共に沖縄に旅立った。

一からの生活 ・・・

彼女の側には、末娘夫婦と初孫がいる。

新しいアパートで1人暮らしを始め、新しい場所で看護師として働こうとしている。

私より9つ上の、おっきいお姉ちゃんは、自分の力で旅立った。

今年の晩夏に、私は日本に帰るけど ・・・

もう、関西国際空港を使う意味はなくなった。

彼女の長女は、京都で愛する人と一緒にいるから安心だと、それを確認して旅立った。

私にとっての通い慣れた京都への道程は、これから遠い懐かしい場所へと繋がるだけだ。

あの、蒸し暑い京都の外れに、彼女はもういない。

あの、底冷えする京都の一角、彼女がこぐ自転車はない。

同じ日本にいても、海を越えなければ会えない。

 反省はしても、沖縄に引っ越したことを後悔はしない

と、震えながらも胸を張って言った彼女。

おっきいお姉ちゃん ・・・

私はあなたの決断であれば、それを100%応援するよ。

おっきいお姉ちゃん ・・・

あなたが見上げる空ならば、そこには小鳥が舞うだろう。

おっきいお姉ちゃん ・・・

あなたの頬を撫でる風なら、きっと優しく吹くだろう。

おっきいお姉ちゃん ・・・

あなたの触れる草の葉は、指先から自信を与えてくれるだろう。

おっきいお姉ちゃん ・・・ 

あなたの人生は、あなただけしか生きられない。

誰も代わりに生きてくれない。

もう、妻としてでもなく、母としてでもなく、1人の人間として生きて欲しい。

妻らしくでも、母親らしくでも、女らしくでもない ・・・

あなたらしく、生きて欲しいよ。

沖縄の早春は、彼女をどんな風に、迎えているのだろう。
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         2007年10月 秋深まるビーナスラインにて
by yayoitt | 2008-02-28 04:27 | 遠くにて思う日本 | Comments(21)
その窓から ・・・ あなたへ
今朝の雪は、あなたの頬で優しく融けてくれただろうか。

午後の喧騒は、あなたの耳から入り込み、心を騒がしたりしなかっただろうか。

少し長くなった入り日は、あなたに何か、未来への希望を見せただろうか。

夜中の静けさは、あなたに平穏をもたらしてくれただろうか。

あなたは、耳を澄ますのだろうか。
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水道に、水が通る音 ・・・

電化製品がが、休まず動く音 ・・・

隣人が、寝返りする音 ・・・

窓ガラスに、風があたる音 ・・・
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あなたは、窓から抜け出し、真夜中の空に舞うのだろうか。

地面が、冷気で堅くなる音 ・・・

林の木が、身を縮める音 ・・・

空高く、雨から雪が生まれる瞬間の音 ・・・

雲が千切れて渡る音 ・・・
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あなたは、思いが向かう方へと、ただただ進むのだろか。

渡り鳥の、羽根を震わせる音 ・・・

鹿が角をこする音 ・・・

ウサギが、耳をピンと伸ばしてそばだてる音 ・・・
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森が、深い森が、まだ雪に閉ざされたかのような森が

あなたを、導いているのだろうか。

その川は、うねりながら大地を這い

遥かなる母の海へと永遠のように、水を注ぐ。

それをあなたは、見下ろしているのだろうか。

白熊の親子が黒い鼻を天に向け、あなたを見上げる。

両手を広げて、あなたが浮ぶ夜の静寂に ・・・ 

あなたは、どんな音を聞くのだろうか。
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どうか、守られますように。

どうか、支えられますように。

どうか、眠れますように。

あなたの夜が ・・・ その窓からあなたを

ほら、今、開放して飛び立たせてくれますように。

静か過ぎる暗闇は時に、心を騒がしてしまうから ・・・

長すぎる深い夜への導入は時に、心を塞いでしまうから ・・・
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春が来ない と

夜が明けない と

温かさを感じない と

光が見えない と

寒いんだ と

涙で濡れるんだ と

あなたが、嘆かなくても良いように。

ほら、今夜、窓から開放されますように ・・・ 

光が届く時間まで、ぽっかり浮んで微笑みますように ・・・

月が、守ってくれる。

あなたのことを ・・・

by yayoitt | 2008-02-26 04:09 | Go Go Girl | Comments(4)
血圧ジェットコースター
多分、誰もが経験のあるだろうこと ・・・

だけど、自分の身に起こると、とても驚いてしまうこと ・・・

              血管迷走神経反射

こう、難しい名前で言うと、んん? とお思いかも知れない。

暑い場所に立っていて気分が悪くなり倒れる、
気持ちの悪い映像を見ていて気分が悪くなり、気を失いかける、
採血してもらっている途中に気が遠くなる、
ショックなことを聞いて、意識を失う、           などなど ・・・。

           一般に言う ・・・ 失神

病的なものなど、幾つか種類がある中で、この 血管迷走神経反射 は
最も頻度が高く、健常者にも起こる。

原因としては ・・・

強い痛み 精神的ショック 情緒的ストレスなど。

症状は ・・・

血圧低下 頻脈(脈拍数の増加) 脈圧(脈の圧力)減少 四肢冷感
顔面蒼白 意識が低下 呼吸回数が多くなる 

急激に血圧が落ちた結果、バターン と倒れてしまう。
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私も度々、これに襲われてきた。

初めて起こったのは、看護学生時代の耳鼻科外来での実習中 ・・・

 外来手術、ということで舌にできた良性腫瘍を取り除くという手術。

 高齢のおばあさんは、舌の部分麻酔を受けただけで、目をパチパチさせている。

 医師が、メスで舌のできものを、まるでサイコロを切り抜くようにコロンと切り取った。

 おばあさんは、平気な顔で目をパチクリ ・・・ 

 医師の背後でそれを見ていた私 ・・・ 

 周囲の音が遠ざかり、目の前が赤くなり、吐き気がし、キーンという音が鳴り ・・・

 すかさずトイレに逃げ去り、はぁはぁ言いながら鏡を見ると、幽霊の看護学生がいた。


その後は、ちょくちょくと気を失いかけている。

 頑固な根っこの親知らず抜歯で、二時間半、口を開けっ放しで痛みと戦った後、
 気を失い、目が覚めると内科医が来て血圧を計っていたことも。

 幸いなことに親知らずは、ちゃんと抜けていた。


最近多いのは、生理2日前の早朝の激痛。

 ベッドの上、痛みでのた打ち回った後、吐き気があるのでトイレに行き、
 しゃがみこんだまま気が付くと汗びっしょりになっている。


                一応

看護師なので、どうしてそうなるのか、メカニズムはよくわかっている。

それ自体が病気の症状ではないことも。

             なんだけどっっ

これが我が身に起こると、とっても心細くて不安なものである。

毎回、必ず ・・・

   あぁ ・・・ 私、今 ・・・ 死ぬんだぁ

と思う。
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そして ・・・ 今朝
by yayoitt | 2008-02-25 03:20 | やっこは、こんな人 | Comments(30)
また、外れた顎 ・・・ でも落ち着いてぇ
クリスマス直前の週末の夜、救急病院にタクシーで駆けて行ったのは、14ヶ月も前のこと。

それからもちょくちょく、何らかの拍子には、右の顎が外れていた。

その度に、救急で担当してくれた女医さんの方法を思い出して、自分で両手を口の中に入れては治していた。

              ・・・ のに

今回、犬たちと遊んでいて、笑った拍子に外れた顎は自分の力で治まらなかった。

右顎が外れているので、左に顔が歪んでいる自分 ・・・。

マイケルは買い物に出掛けたまま、まだ帰ってこない。

尻尾を振って、口を開けたままでうろたえる私を見上げる犬たち。

両親指を口の中に入れて、奥歯をグイッと下に押し下げて後方に押すけど治らない。

          ほへはほー はいへふほはふひははい
(外れア語直訳 : これはもう ・・・ マイケルを待つしかない)

顎が外れ、歪んだまま口を開き、涎(よだれ)が出るのを時々、上を向いて飲み込む。

1人でいると、なかなか寂しい。

待つこと20分 ・・・ 救い男 マイケル のお帰りだっっ

犬たちよりも先に、玄関のドアに駆け寄る私。

 ただいま、おうおうおう ・・・

と、だらしなく口を開けている私に気が付かず、犬たちに挨拶するマイケル。

 はいへふ~~、まは、あほうぁはふえふぁぁ~~~
(マイケル~~、また、顎が外れたぁぁ~~~)

 えっっ? 何っっ?

 あほうぁ~、はっふっへはほっっ
(顎が~、外れたのっっ)

口を開けて、明らかに様子がおかしい私をしばらく見つめたマイケル ・・・

ようやく、顎が外れたという事実が飲み込めた様子。

     ってか、この顔とハグハグ言ってる自体で、異常と気付いてくれっっ

キッチンに行き、買い物袋をテーブルに置くマイケルを、尻尾を振って見上げる2頭の犬と私。

 よしっっ、どうしたら良いんだっけ?

 まふ、へぇほ、あはっへ
(まず、手を、洗って)

汚い手が口に入るのは嫌だと、冷静というか、ちゃっかりな病人。

言われた通りに手を洗う使用人セバスチャン、マイケル医師。

 よしっっ、で、どうするんだっけ?

手袋したいかと尋ねたら、マイケル医師は 素手のままで良いよ と言った。

手を洗え、と真っ先に指示した自分を、ちょっぴり反省する。
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             これが普通の状態の顎関節
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        顎が外れた状態、もう少し前の窪みに入り込むことも

ハフハフ語のまま彼の腕を掴み、親指を奥歯の当てさせ、グッと下に押し下げるよう伝える。

が、最初の数回は力加減がわからないらしく上手く行かない。

 ゆっふい、ふうぅっとはへえぇ、でぇ、おふ
(ゆっくり、ぐうっと押さえてぇ、で、押す)

上手く行かない ・・・。

ふと、大切なことを思い出した。

背中と頭を壁に付けて、ヤブ医者マイケル、マイケル医師が押しやすいようにした。

 ゆっふいぃ~~
(ゆっくり~~)

 ええええぇ
(でえええぇ)

 おふううう
(押すううう)

                カクッッ


小さな音と共に、マイケルが手を離した。

 おうおうおう、入った入った!

 はははははっ、カクって音がしたからわかったよ!

上機嫌の私と、もっと上機嫌のマイケル名医。

 もうこれで、僕は顎を外れた人を救えるなぁ~

 やっぱり、顎がはまっているって素晴らしいぃ~

私以上に有頂天になっているマイケルが言った。

外れた顎を、治します で仕事が出来るかなぁ~

顎が入ればすっかり恩など忘れて冷静な私は ・・・

 あぁ、でもさ、需要がないだろうし、お金にならないんじゃない?

そんな言葉も耳に入らないくらい自信満々のマイケル。

  そっとしておいてあげよう ・・・ まっっ、あたしゃ顎が元に戻ったしなっっ

なんだかウキウキしているマイケルを、尻尾を振り続けて犬たちが追い駆けて行った。
by yayoitt | 2008-02-24 04:47 | やっこは、こんな人 | Comments(28)
ピーターの、思い出 
スコットランドに来て、はじめて手にしたのが ホテルの仕事 だった。

ここで1年半を過したわけだが、最初の1年は、レストランの朝食と昼食担当。

朝は5時半からのスタートで、毎朝、朝日が昇るよりもずっと早くに家を出た。

ホテルは、エジンバラのメイン通り Princes Street にあり
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目の前には スコッッモニュメント と エジンバラ城 を見る、それは良い場所。
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週に2回、日本人の団体客も宿泊するので、その朝食のウエイトレスをするのは、とても嬉しかった。 



一緒に働いていたウエイターの ピーター は背が低く、とてもハンサムでかわいらしい男性。

私は、日本人のお客さんから度々、お願いをされたものだ。

 “ あの ・・・ あのウエイターさんと一緒に写真を撮ってください ”  

その度に、アイルランド人の30半ばの彼は ・・・

 “ あらぁ、どうして、あたし? ”

と顔を赤らめながらも、しっかりカメラに向かって微笑み、必ずその女性の頬にキスした。

それをカメラのレンズから見ながら、私は心で呟いていた。

             ・・・ 罪深い男よ

彼が ゲイ だということは、頬を赤らめてキャーキャー言ってるお客さんには ・・・ 黙っておいた。 笑

いつも金髪を短かく整えている彼 ・・・。

冗談で頭をいじると、真剣に怒っては鏡の前へ走り、念入りに乱れた短髪を整えていた。

あの前後の違いは、私には理解が出来ず、何度も何度もいじくっては怒らせたもの。
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              左から2人目がピーター

彼はよく言ってくれた。

 “ やっこ ・・・ もしも、やっこが人種差別を受けるようなことがあれば
  僕が守るから
 ”

その言葉の通り ・・・。

教養のないシェフから 英語が理解できない外人 と言われた時、ピーターは真っ先にキッチンに行き、面と向かってシェフに話をしてくれた。

 “ 僕はね、ほら、こんな風だからいつも、男の人から差別を受けるんだよ。
  だから、差別を受ける人の気持が痛いほどわかるんだ ・・・
 ”

週末になると、毎週のように踊れるクラブへ誘ってくれた。

ピーターと、彼のパートナー、そして同僚でゲイの男性たちと踊りに行く。

お酒に弱いピーターは、何度も優しいキスをしてくれた。
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 “ やっこ、辛いことがあれば、何でも言って ・・・ ”

耳元で囁いてくれる彼は、何故かとても寂しげに、泣きそうな瞳をしていた。

大きな音楽の渦 ・・・ 左右上下に動く人々の影 ・・・

気が付くと、お酒が弱い背の低いピーターを私は、見失ってしまっていた。

 ピーター   ピーター

私の声は紛れ、散らばる光の欠片に壊れ、彼には届かなかった。
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気が付くと彼は、遠くを眺めては立ち尽くしていることがあった。

彼の背中は、何かを隠していた。

だからと言って、誰に告げるものではないのが彼にとっては自然で、そうして生きていた。

 ピーター   ピーター

彼の苦悩はきっと、差別的なことと関係があったのに違いないと、思っている。

今から9年前 ・・・ 

立ち止まった背広の後姿を

タバコの煙を眩しげに見る瞳を

私も守ってあげたかった。

愛しい友は今、どうしているのだろう ・・・。
by yayoitt | 2008-02-23 05:38 | 英国暮らしって... | Comments(20)
DogsTrust の雑誌から ・・・
DogsTrust(ドッグズトラスト) は、英国最大の犬のリホームチャリティー。

全国に17箇所、リホームの為のシェルターを持っている。

ここから、犬の里親になる為には、10の段階を踏むこととなっている。

1 質問用紙の質問に答える
2 スタッフと直接に話をする
3 実際に犬たちを見て廻る
4 スタッフの下、合った犬のリストを作る
5 欲しいと思った犬と実際に会って時間を過す
6 スタッフによる家の見学
7 獣医による健康チェック
 (全ての犬が、マイクロチップを受け、予防接種を受け、避妊去勢されている)
8 この犬の里親になる前のスタッフとの話し合い
9 共に新しい家へ
10 後々のサポート、相談など

DogsTrust から年に数回、雑誌が発行され、寄付金をしてサポートする人々や会社、ここから里親になった人々の元へ配られる。
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Wag!(尻尾を振る の意)という名のこの雑誌、春版が届いた。

中を見てみると ・・・

           家族を探している犬の紹介
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         Jill だけのあなたに、なってくれますか?

年齢 : 9歳

種類 : ベルジアンシェパードのクロス

好きなこと : 長いお散歩 水溜りで遊ぶのと、ビーチで遊ぶのも大好き!

嫌いなこと : 他の犬は殆ど 猫 幼い子供

チャームポイント : チャーミングに散らばっている白髪 とても上品な足

趣味 : ビーチが一番! 海で水遊びするのが大好き!

経歴 : 高齢の彼女は、4歳の頃からずっと、このドッグトラストのケネルにいます。
     そこのスタッフは彼女のことが大好きで、彼女の為にも、
     余生を永遠の家族と共に過す方が良いと ・・・ 
     ことに彼女の、犬生の黄昏時が近付いてきているのだから ・・・。

Jillは、他にペットのいない、静かな環境で大人だけの家族と暮すのが幸せです。
Jillは、その人に慣れるまで、何回かの顔合わせを繰り返さないといけないでしょう。
でも、一旦、その人のことを知ったならば、彼女はとっても愛情に溢れた犬です。
まだ健康で、元気があって、お散歩が大好きなJillです。

               成功したリホーム
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         6 Petal(ペタル) - ダーリングトンより

Petalは、彼女が2歳の時にダーリングトンからリホームされ、
今、彼女は11歳、少しだけ身体が堅くなってます。
ご主人のエマさんは、彼女のことを、100万の中のぴか一な犬と表現され、
一生の中で、彼女と一緒に暮らせることは、この上ない幸運だと言います。
彼女は沢山のトリックが出来ます ・・・ 
高い所でお手、チンチン、ごろん、お話、そして何と、バン!と
ピストルで撃つ真似をすると、ゴロンと腹這いにもなるんです。
Petalが尻尾を振らない時は、眠っている時だけだとか ・・・。

      ☆           ☆           ☆

今日も病院で、散歩の途中で、DogsTrustから迎えられた犬たちに、沢山出会う。
by yayoitt | 2008-02-22 04:02 | 迷い犬、犬のこと | Comments(22)
一年ぶりの再会 真っ黒介ルイス
水曜日の夜から、週末明けまで、ラブラドゥードルのルイスがやって来た。

ルイスは今、1歳8ヶ月、去年の5月に泊まりに来た時はまだ、体付きに幼さが残っていた。

が今は、全体に丸みが付いて、どっしりしている。

それなのに、ビュンビュンと降る尻尾と共に、左右に揺れるお尻は、一年前と同じ。

久し振りに再会したノーマンの反応は ・・・

 クンクン ・・・ クンクン (鼻先~おチンチンへ)

 こいつ、知ってる ・・・ クンクン (おチンチンに集中)

 こいつ、あ、あの時の ・・・ 真っ黒お化けだっっ

 ガウガウガウガウガウガウガウガウ (思い切り歯を見せて怒る)

図体はでっかいのに、ビビリのルイスは、上目遣いでノーマンと私達を交互に見ていた。

 “ ごめんねぇ~ ルイスゥ~ 気難しいお姉ちゃんのこと、思い出した? ”

そう、去年の5月も確か ・・・。

2犬で遊び始めると、何かが気に食わないノーマンが、ルイスを追っ払ってしまっていたっけ。

よく観察していると、他の犬の遊び方に比べて、ルイスは雑な感じだった。

そして、身体もでかくて黒いから、ノーマンはどうやら、ルイスのことが脅威な存在のよう。

脅威 と、お転婆娘のノーマンに一目置かれているルイス ・・・

そんなことは、知りもせず ・・・ 遠巻きにノーマンを上目遣いで見つめるのだ。

 “ ねぇ、ルイス ・・・ ノーマン姐さんを、ビビらせることのできる犬って、
  そんじゃそこらには、いないんだよぉ~
 ”

そんな言葉を理解してか、してないのか、真っ黒介お化けルイスは、宙に向けた鼻で クーン と啼いた。
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        おやつを貰う時は、一緒にルイスのベッドで、仲良く ・・・
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       ビビっているのに、ルイスのベッドは、横取りするノーマン
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      ビビられているのに、ベッドから追い出されて、床で寝そべるルイス

     ごめんねぇ、ルイスゥ~、ノーマン姐さんはやっぱ厳しいよねぇ
by yayoitt | 2008-02-21 04:40 | マイケルのドッグウォーキング | Comments(8)
太陽の光で衣替え
先月の1月は、至上最雨量の1月だったとか ・・・

今月の2月は、とてもマイルドで、天気の良い日が数日続いた。

公園の芝には、スノードロップクロッカスが咲き ・・・
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日当たりの良い家の庭では、が花を開いている。

              それでも、まだ2月

太陽の光は弱くて、気温は零下すれすれ。

確かに、空気の中に春を感じるけれど、正直、まだまだかな ・・・。

海から流れてきた霧が、一日中、街を覆いつくすこともある。

そんな日は、建物の中にいても、手が温まることはない。
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                それなのに

              何故にいるのか

               半袖人


寒いと言うより、痛いような気温の低い、よく晴れたエジンバラ ・・・

ほらほら ・・・

街の角から、そこから、あそこから、向こう側から ・・・

出てくる 出てくる 半袖人

ジョギングしているわけではなく、ただ、Tシャツ一枚で胸を張って歩いている。

日差しが、彼らの胸に当たると、そこだけまるで、常夏のように錯覚する。

しかし ・・・ 隣には、分厚いコートに首をすくめる女性が立っている。

そして半袖人は、建物の陰に入り ・・・

ぶるるっっ と身震いしたかと思うと ・・ くしゃみをする。

             やっぱり、寒いんかいっっ

と、後頭部をぺシッッと叩きたくなる、よく晴れたエジンバラ ・・・。
by yayoitt | 2008-02-20 05:43 | スコットランドって... | Comments(20)
仔犬、仔猫、捨てられた犬、拾われた猫
 “ うわぁ~、かわいい~Puppy(仔犬ちゃん)、今、何週ですかぁ? ”

 “ ジャーマンシェパードの仔犬だねぇ、まだ耳が寝てるぅ~ ”

 “ キャァー、Kitten(仔猫ちゃん)はお名前はぁ? ”

 “ 今日は、2回めの予防接種なの? ”

 “ この仔は、どこのブリーダーさんから来たんですか? ”

 “ 身体は小さいのに、Paw(足)は大きいねぇ~、でっかくなるね ”

毎日のように、病院の窓口で交わされる言葉 ・・・。

小さな仔犬を抱いて、仔猫を新品のバスケットに入れて、窓口に飼い主さんが寄ってくれる。

とても嬉しそう、幸せそうで、その腕の中に包まれた小さな命は、恐れも何も知らないかのように、好奇心一杯の目でキョロキョロオフィスの中を見回す。

スタッフと飼い主さんが交わしている会話の向こう ・・・

抱かれた仔犬や、バスケットの中の仔猫の、その向こう ・・・

飼い主さんの肩越しから見える、待合室の向こう側 ・・・
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椅子に座った老人と、同じように老いた痩せた雑種犬。

使い古したバスケットの中で舌をチロチロさせている、昔に拾われた猫。

舌を出して、ハァハァと荒い息遣いで緊張している、血液検査の結果を待つ7歳の犬。

ナーッナーッ と啼き続ける、ここ数ヶ月、皮膚病と戦っている雑種猫。

Dogtrust(犬のリホームチャリティー団体)のタグを付けて、
飼い主さんの背中の後にうずくまるゴールデンレトリーバー。

膝の上に置いた藤の籠の中を覗き、涙を浮かべて愛する猫を見つめる男性。

9回目の予防接種を受けに来た、2歳でリホームされた元レース犬のグレイハウンド。

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賑やかな華やかな声の向こう側に ・・・

ひっそりと、誰も知らないけれど ・・・

その2つの命だけが知る、長い歴史を背負った、飼い主さんとその動物 ・・・

それぞれが、ありったけの過した日々と、ありったけの愛を抱えて ・・・

その冷たい椅子に ・・・ 冷たい床に ・・・ 身を寄せている。
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生まれたばかりの命と同じくらいに、その愛おしい命は、本当に美しい。

生きてきた、経験してきた全ての記憶が、顔の毛を白く染めている。

何年も前に、その命は、目の前の仔犬や仔猫のように、見るもの全てを追い駆けていた。

ある命は、痛みと共に、人間を信じることをやめてしまった者もいる。

突然に、暗い空の下に、放り出された者もいる。

再び人間の温もりを感じ、それでもいつも、記憶に怯え続ける愛しい命がいる。

大きな建物の中で、いまだに、そのチャンスを未来に夢見る命が、沢山、沢山、いる。
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 “ この子とは、何年一緒にいるんですか? ”

 “ この子は、幾つくらいだって言われてるんですか? ”

 “ 新しいおうちに、もう大分、慣れてきてるんですか? ”
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仔犬や仔猫が、未来に向かって成長して行く、その後で ・・・

怯えて輝き、震えて輝き、激しく抵抗して輝き、口輪をはめて輝き ・・・

誰よりも誰よりも、その命を愛する人の腕の中で、見つめる中で呼吸する輝き ・・・

                愛おしい命よ

              あなたは、宝物

            あなたの命そのものが、宝石

          だから、怯えないで ・・・ 震えないで ・・・


     待合室の椅子の下、古びたバスケットの中で黙ってしまった猫に

        飼い主さんの足元で、耳を立て、震えて涎を流す犬に


伝えたい思いが、沢山、ある。
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by yayoitt | 2008-02-19 05:23 | 動物病院での出来事、仕事 | Comments(18)