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カテゴリ:ロードオブザ やっこ( 5 )
絶望と困惑の サム
おバカで、おデブな サム は溜息を吐いた。

頭から振り払おうとしても、紅茶を煎れながら・・・庭の手入れをしながら・・・思い出してしまう。

昨日、喜びが突然に困惑に、そして今日、その困惑が、絶望に変わってしまったことを・・・。

* * *

フロード様 に会えなくなってちょうど1ヶ月半・・・昨日、サム は再び、ミスターフロード の姿を発見した。
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仕事帰りの同じバス停、他に数人が既にバスを待っており フロード は、外のベンチで携帯電話で話をしていた。

胸が ドキドキ と高鳴る サム、もう会えないと思っていただけに、その再会の喜びは大きかった。

昨日から、エジンバラ中のパブリック学校が夏休みを終えて始まったのだが フロード も、学校勤務だった可能性がかなり強い。

 “ フロード様、お電話でどなたとお話してるのでしょう ・・・、ああ、お元気で、良かったぁ ・・・ ”

サム は平静を装って、でも笑いがこみ上げてくると、違う方を向いて思いきり歯を出して笑った。

フロード がいつも乗るバスが来ると、彼が待っていた人々の列の一番最後に並んで、やはりまだ携帯で話をしながら サム の目の前を通ろうとした。

サム は “ お話したこともありましたね~~、でも、気になりませんわ~~ ” 顔を作ってすましながらも 目の前の フロード を見た。

・・・ が

フロード は サム に一瞥もくれることなくそのまま、バスに乗ってしまった。

ミスターフロード を乗せたバスが、怒ったように音を立てて去っていくと サム は不安で一杯になった。

 “ おお、ミスターフロードォ、どうしてこの サム に、気付いてくれなかったのですか・・・いや、気付かなかったはずがない、だとしたら何故、無視をしたのでしょうか ・・・ ”

頭を抱え サム は、自分の何がいけなかったのだろうか、としばらく考えていたが、何も思い浮かばずに、こういう結論で自分自身を慰めたのだった。

 “ フロード様 は、電話でお話だったじゃないか!! ”

その晩 サム は、少しだけ眠れぬ夜を過した。

                  そして、今日 ・・・。

昨日よりも30分以上遅くなってバス停に行くと フロード の姿はなかった。

サム は本を広げて読み始めた。

 “ いつも ボクのバスは遅れるんだよなぁ ・・・ ”

と、顔を上げてバスが来る方角を見た瞬間 サム はまた、心臓から血液がドックンと流れるのを聞いた。

フロード様 が歩いて来た!!。

フロード は サム の隣のベンチが広々と空いているにも拘らず、シェルターの外に立ったままだった。

サム の気持が沈んだ。

そしてまた フロード のバスが先に来て、やっぱり フロード が列の最後で サム の目の前を通ろうとした。

サム は平気そうな顔のまま、心の中で必死に祈った。

 “ ミスターフロード!!どうか、サムを見てください ・・・ ”

が ・・・。

フロード様 は結局、電話で話をしているわけでもないのに、また サム に一瞥をくれることのないまま、バスに乗って去って行った。

 “ おバカな サム ・・・。 おデブな サム ・・・。一度お話したからと言って良い気になりました ・・・。一度ちょっとたまたまお話したことなんて、何の意味もありませんのに ・・・。有頂天になってた サム がバカでした ・・・。 ”

 “ 明日からはまた、遠くから見つめて見守るだけで満足しよう ・・・ フロード様、あなたのお元気な姿が見られただけで サム は満足すべきでした ・・・ おデブな サム、おバカな サム ・・・・・・ ”
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by yayoitt | 2006-08-17 04:05 | ロードオブザ やっこ | Comments(28)
ミスターフロード ・・・ 何故こんな所に???
ミスターフロード とほんの少しの会話を交わしてから、2週間以上が経った今、サム は少し焦っていた。

あの、暑いバス停での再会から、まだ一度も会っていないのだ。

サム は、自分の仕事が忙しく、いつも数本遅めのバスを乗るからだと言い聞かせていた。

しかし本当のところ、こんな風に感じていた。

 ミスターフロード、おバカなサムに会うのはもう沢山だって、思っているのに違いない・・・。

そうして、サム の心は暗い海の底、沈んでしまうのだった。

2週間前の、舞い上がっていた自分を、サム は思い出し、苦笑する。


そんな風に悲観的になっていたある朝のこと ・・・。

サム はいつもの如く、朝早起きをして 犬の散歩に出掛けた。

サム がいつも行くのは、家から歩いて7~8分の所にある広い公園だった。

サム は愛犬を連れて散歩を楽しみ、そして家に帰る為に来た道を歩いていた。

サム の家のある通りにはバス停があり、そこで数人の人が待っていたが、愛犬がそのうちの1人に突然飛びつこうとしたので、驚いてその女性に誤り、リードをきつく握り締めた瞬間だった。

ちょうど サム の家の前辺りから歩いて来た1人の男性が、サム と歩道ですれ違う直前に、角を左へと曲がって行ったのが目の隅で見えた。

犬に意識を集中させている サム は、すぐには気が付かなかったが、その男性が フロード だと、わずか1秒遅れで気が付いた。

気が付いて角を曲がろうとする彼に視線を向けると、ミスターフロード は、少し口を歪めるように微笑んで サム を振り返る風にして見たのだった。

サム ・・・。

おバカな サム ・・・。

おデブな サム ・・・。
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自分が寝起きでそのまま外に出て、クシャクシャの髪と、腫れた瞼と、そしてクタクタのトレーナーを着ていることを思い出し、目を伏せて知らぬ顔をしてしまった ・・・。

心臓は ドキドキ ・・・。

足は ガクガク ・・・。

フロード ・・・。

もしかして、フロード様 じゃないかも知れない ・・・。

チラッと見ただけだもの ・・・。

おバカな サム の、想像かもしれない ・・・。

でもでも、やっぱり、あれは ミスターフロード ・・・。

それにしても何ゆえ、こんな所を歩いていたのだろう ・・・???

この通りに、フロード様 も、住んでいらっしゃるのだろうか ・・・???


以前、仕事場から同じバスに乗った時、彼が一本手前のバス停で降りたから、そうは遠くないところに住んでいるとは思っていたが、もしも、同じ通りに住んでいるのなら、どうして一本前のバス停で降りたのだろう??

サム ・・・。

おバカな サム ・・・。

おデブな サム ・・・。


サム の悩みは再び、募るのであった。
by yayoitt | 2006-07-15 04:03 | ロードオブザ やっこ | Comments(11)
サムが見た ミスターフロード、初めての笑顔
それは陽の長い夕刻の シャイアー
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サム は、仕事を早々と終えて、ホッと溜息をつきながらバスを待っていた。

バスの来る方角からは、まだ真上近くにある西日と共に、見覚えのある懐かしい姿が・・・。

 ミスターフロード ・・・。

サム は心の中で呟いた。

あの日、別れて姿を失ってからもう2ヶ月近く経った。

ずっとバスを待ちながら、ちょっとだけ ミスターフロード の姿も待っていた。

もしかしたら、フロード はこの近くにもういないのかも ・・・ そう諦めかけていたところだった。

 ミスターフロード ・・・。

前回は、バス停の囲いの外にあるベンチに座った フロード が、今日は サム の座るバス停のベンチに座った。
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サム は、鼓動が コトン と音を立てるのを知りながら、俯(うつむ)いた。

俯(うつむ)く瞬間に、フロード が サム の方を見た、気がした。

そして サム が顔を上げて、バスが来る方を伺いながら フロード の横顔を見る。

・・・ と、横顔を盗み見しようと思った サム の期待を裏切り、フロード は サム を見たのだ。

そして、サム に視線を据えたまま微笑んだ。

 ミ、ミ、ミ ・・・。

心の中で どもっている サム、なのに思い切った行動に出た。

 “ Hi ya ”

ミスターフロード に微笑み返しただけではなく、なんと、声を掛けたのだ!!!

フロード は微笑を笑いに変えて、“ Hi ” と応えた。

Hi と フロード様 の声が聞こえたらもう、サム に怖いものはなかった。

 “ とっても良い日になりましたね・・・。 ”

フロード の声が応えてくる。

 “ 今週末はもっとあったかくなるらしいよ、24度くらいまで ”

サム は驚いた表情を見せてから少し大袈裟に感嘆の声もあげた。

 “ このあったかさが、このままあと2ヶ月も続いてくれれば良いんだけどね・・・ ”

サム にとっては長い文章だったが、ここ最近よく使い慣らした表現だった為に つまずかすに一息で言った。

 “ そうそう。もう、オフィスの中にいると 外にいる人が羨ましくてたまらない。 ”

そういう フロード を見つめながら サム は心の中で叫んだ。

 今、ぼく達2人を見ている全ての人が、このサムを羨ましいと思うだろう~~~!

サム ちょっと いかれていた

嬉しくって調子に乗ってきた サム、聞かれてもいないのに 自分がそこで働いてて、やっぱり外には出られないから、窓から外を見ては通行人を羨ましいと思う、と長々喋った。

フロード は頷きながら、いつもと違うスーツの裾を手でつまんでヒラヒラさせながら言った。

 “ 冬だったら、家の中はあったかで ははは~建物の中の仕事で良かった って思うのに、今は外に出たくって ううう~~ って思うよね! ”

ミスターフロード は、少し抑揚すると 声が少しだけハスキーになるらしい。

そのアクセントから、サム は フロード様 が、アイルランドの方だろう、と思った。

そうしているうちに、微笑む フロード の背後を2台のバスが近付いてくるのが見えた。

最初のバスを見て、フロード が立ち上がり、その後ろに2人誰かが並んだ。

その後姿を サム は見送っていると、バスに乗る直前に フロード が振り向いた。

やっぱり微笑んでいた。
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サム が “ じゃ、またね ” と声を掛けると、フロード が少しだけ頷いて、ちょっと片手を挙げた。

その帰り、乗ったバスの中での サム といったら、それはそれは、微笑というよりはもう、笑いが止まらなくて大変だった。
by yayoitt | 2006-06-29 02:54 | ロードオブザ やっこ | Comments(26)
ミスターフロードとの再会にサムは・・・
シャイア に太陽の光が降り注ぐ・・・。
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ポカポカ春の陽気が草むらに残る夕刻。

仕事を終えた サム(やっこ)は、いつものバス停へと向った。

バス停の手前で、一瞬、足を止めた。

心臓が ドクン と鳴った。

 “ ミ、ミスター・・・ミスターフロード・・・ ”  

そう、そこには、既に椅子に腰を下ろして目を細めている フロード がいたから・・・。

あれはもう、一月近くも前のことだろうか ・・・ サム が フロード に出会った。

サム は、こんな時には決まって、知らん顔をしてすまし顔をする癖がある。

フロード
 のベンチ近くに座り、何となくバスが来る方向に目を向けながら、フロード の表情を観察する。

 “ ミスターフロード ・・・。結構、お髭もあって、ちょっぴり疲れた イライジャウッド だな・・・ ”

 “ でも、その大きな青い瞳は、何てお美しいのでしょう ・・・ ”

バスが来た。

わざとゆっくり立って、ミスターフロード の背後に立つ。

一瞬、フロード が サム を見て、先にバスに乗せる雰囲気があった。

・・・が、恥ずかしがり屋のおバカな サム は、目が合うと微笑んだだけで、折角のそのチャンスを受けずに、そのまま一歩下がるようにして、フロード の行為を無駄にした。

バカな サム ・・・ おデブな サム ・・・

しかし、恋に落ちた サム ・・・ フロード の後ろを追い駆けて、下の階もガラガラなのにわざわざ、フロード様 に付いて階段を上って行った。
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階段では、目の前に、フロード様 の茶色い革靴が見える。

サム ・・・ 笑いがこみ上げる。

何してんだ・・・ひっひっひ、一体わたしは何してるんだろう・・・うっひっひ

フロード が座ったその2席後ろに座って、ジッと後姿を見守る サム

サム と フロード の間に人が座り、その人が降り、また誰かが乗ってきたり・・・

下の階から、大声で泣き続ける赤ん坊の声がしていた。

その声は2階建てバスの隅々に広がっていたが、サム にはそんなこと、どうでも良かった。

 “ できれば、ミスターフロード の 匂いを嗅ぎたい・・・・・・!! ”

は~~~。バカな サム、愚かな サム ・・・

そうして、混み合ってきたバスに充満する香りを、思い切り低い鼻で吸い込もうとしたその時!!

急に、ミスターフロード が立ち上がった。

まだそこは街の中心で、以前、フロード が降りた場所までは遠い。

思い立ったように、突然、立ち上がった感じだった。

慌てる サム、動揺する サム ・・・。

鼻の穴をしぼめて、窓に頭を押し付けて、降りていく フロード を見下ろした。

そこから見える フロード の表情は、それまでの彼とは違って固かった。

何か、怒っているようにすら思えた。

サム は考えた。

 “ サム の匂いを嗅ぐ行為が、ミスターフロード にばれてしまったのか・・・? ”

階下の赤ん坊が、ギャアアアア っと、啼き続けていた。

サム は、ハッとした。

 “ ミスターフロード ・・・。赤ん坊の泣き声が、耐えられなかったんだろうか・・・? ” 

希望を失った帰り道、肩を落として サム は、寂しく独りで、混み合うバスの中、シャイア の街をぼんやり眺めたのだった。

              フロードは赤ん坊が嫌い??
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by yayoitt | 2006-05-05 06:19 | ロードオブザ やっこ | Comments(16)
ちょっとドキドキした
狂気的な忙しさの中、定刻を数十分過ぎて病院を出ると、激しい風が吹いていた。

数秒歩けばある、バス停に到着するまでに、既に3台のバスが行き過ぎ、仕方無しに、10分ほどゆっくり待つこととなった。

バス停の椅子に座り、バスが来る方をちらちら見ていた、そんな時...

バスが来る方角から、若い男性 が1人歩いて来た。

後ろを振り返りながらなので、バスに乗るのだろう、ってわかった。

余り背は高くなく、薄い茶色の短い少しカールした髪、短めのコートを着て、リュックを背負っている。

近付くに連れて、その顔つきがわっきりわかった。

 ドキドキ っとした。

それは彼が、余りにも、elijah wood  イライジャ・ウッド にそっくりだったから!!
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私が座っているバス停に近付いてくる間に、4回くらい目が合った、1回は結構長めに目が合った。

多分、私がジ~ッと見てた証拠だろう...と、思った。

隣に彼が座ると、周りには他に誰もいないし、何故か緊張してしまった。

彼がバスが来る方を見ている時に、横顔を盗み見するけど、見れば見るほど、よく似ている。

私の頭の中は ... “ ミスターフロード が隣にいる、フロード、フロード... ”

そして、“ 私は、サム、サム、サム、私はサム、ミスターフロードを守るサム... ”

隣に座っている間に一度、ミスターフロード が、私の方を見て、なんだか何か言いたそうな雰囲気が一瞬だけあった。

でも、年甲斐も無く、若い男の子に緊張してる私は、鼻歌歌いながら、彼とは反対側の、フィッシュ&チップスの店を眺めたりしてしまった。

それから過ぎること 多分 1時間 ... とはそんな気がしただけ ... 本当は2分くらい ... 私のバスが来た。

ミスターフロード
 は、これに乗るのかなぁ?と、ぎりぎりまで様子を伺った。

が、その様子は無く、私が立ち上がってバスが来て、ドアが開き、フロード を残してサム は1人でバスに乗り込んだ。

と!

バスの戸が閉まる直前に、ミスターフロード が勢い良くバスに乗り込んできた。

 ドキドキ

いつも座る2階に上がり、前のほうに座ると、靴音で ミスターフロード も上がってきたのがわかり、彼はずっと後ろの方に座ったようだった。

いつか自然を装って、どこに ミスターフロード が座ってるのか確かめたいと思ったけど、何故か、もうすっかりアクトレス気分の私は、

 “ きっと、ミスターフロードが、私の後姿を見てるから、振り向いたら絶対に目が合う... ” などと高慢な想像が占領して、結局、バスは走り続けた。

どのバス停で誰が降りる気配がしても、後ろだけは、振り返らなかった。

ほとんどバスの中が空になっても、万が一の為、振り向けなかった。

それなのに、私が降りるバス停の1つ前のバス停に来た時に、何故か、ふっと、振り向いた。

ら...

ちょうど、ミスターフロード が階段のところに立ち、降りようとするところであった。

そして・・・

ミスターフロード が、階段を下りる前に、振り返って、私を、見たのだ!!!

私の周りに、数人乗客がいるが、確かに フロード は、サム を、見たのだ!!!

彼が階段を下り、そしてバス停でバスを降りると、2階の窓から私は フロード の姿を見送った。

私の降りるひとつ前のバス停から、何処に行ったんだろう...

何となく、お互いに視線を気にしたのは、偶然だったんだろうか??

ミスターフロード
 にはやっぱり、サム が必要だったんだろうか??

はっ!あたしは一体何を言ってるんだろうか??

... というわけで、ちょっと ドキドキ してしまいました。

こんな年になって、思い過ごしの ドキドキ くらい、いいよね~??

 “ サム ... 本当にここにお前がいてくれて、僕は、嬉しいよ ... 
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ああああ~~、あたしったら何言ってんのさ、バカ、バカ ...
by yayoitt | 2006-04-12 02:22 | ロードオブザ やっこ | Comments(27)