カテゴリ:動物病院レポート ケースから( 71 )
キャバリア仔犬、ケイティーのこと

Mr and Mrs.T は、トースティーというキャバリアの女の子と暮らしていた。

キャバリアには、高い確率で見られる心臓病。

トースティーも、やはり不整脈を現し、心臓の薬を服用していた。

そして、ある日 …

食べなくなった。

食べなくなっても尻尾は振っていた。

だけれども、瞳の輝きが失せた。

何かを、語りかけていた。

そして … そのメッセージを受けて …

Mr and Mrs.T は、彼女とお別れをした。

断腸の思いで、けれど、彼女にとって最善の選択をした。

あの日から、泣いてばかりだったという70代のご夫婦だ。

数ヵ月後の先週のある午後。

同僚が手術室を掃除していた私を呼びに来た。

言われて待合室に行くと …

Mr and Mrs.T が、その小さな子を抱いて万遍の笑顔で立っていた。

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彼女の名前は、ケイティー

トースティーと同じキャバリアの女の子。

今、生後8週間。

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 トースティーを初めて抱いたのは、やっこだったのよ

 だから、ケイティーも、やっこが初めて抱いてあげてね

と。

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13歳で虹の橋の袂へ行ってしまったトースティーが …

赤ちゃんの時に私が抱っこしたことを、私はすっかり忘れている。

なんて …

なんて …

心動かされる言葉だろう。

風邪をひいて咳き込んでいる、こんな私の腕の中で …

ケイティー は、私の匂いを嗅ぎ、鼻を舐め、キスをしてくれた。


by yayoitt | 2017-10-09 04:35 | 動物病院レポート ケースから | Comments(4)
ぼく今日、がんばった

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ぼくは今日、わけがわからなかったけど


なんだかいっぱい

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がんばった って褒めてもらった


お父さんだけ


ぼくを見て


顔を少ししかめた

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 あれ?


 ここにあったタマタマがない …


by yayoitt | 2017-08-26 02:55 | 動物病院レポート ケースから | Comments(4)
愛しの(毛)痕跡

ある家族に愛されたコッカースパニョル。

彼の名前は マーフィー

享年15歳。

いつも忙しいご夫婦と、3人の子供たちに見守られながら …。

静かに息を引き取った。

その身体を病院へ連れて帰る時 …

 このベッドも一緒に持って行って下さい

 返さなくても良いから …

 もしも、誰かに使ってもらえれば使ってください


泣きながらご主人の奥さんが言った。

そうしてマーフィーの身体は。

暖かいベッドと一緒に15年間暮らした家を後にした。

病院に戻り、マーフィーの身体を火葬場に送る準備をする。

彼の身体で温まっていた、まだ新しく見えるベッドだけが残る。

そのベッドを洗濯機で洗う。

乾いたベッドの縫い目に、見つけた。

マーフィーの痕跡を。
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彼の毛が丸まって、いくつもベッドの縫い目に留まっていた。

その毛玉をひとつひとつ丁寧に取り去る。

彼がそこで眠った証。

彼が生存していた証。

マーフィーが愛され、愛した証。
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私はそれを、とても捨てたりできなくて …

家に持って帰ってきてしまったよ。
by yayoitt | 2017-03-17 02:42 | 動物病院レポート ケースから | Comments(0)
なんて幸せな安楽死

肝臓に癌が見つかったゴールデンレトリーバー。

見る見る痩せ細り、とうとう食べなくなってしまった。
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ある診察の最後 …

ご主人家族の希望で、獣医師と共に、おうちを訪問することに。

家族がみな、その時間に集まっての安楽死。

ゴールデンレトリーバーのグレイスを取り囲み …

5年間一緒に暮らしている犬のクリオも一緒に …

成人の息子が犬用のビスケットを持ってくる。

2日間、何も食べなかったグレイスがビスケットを口にする。

獣医師が注射針のキャップを外す。

私が前足を支え、母親がグレイスの頭を抱きかかえる。

成人している娘がグレイスの背中を撫で続ける。

クリオグレイスの横にぴったりと寄り添っている。

父親は娘の後ろで娘の肩を抱いている。

獣医師が息子に、ビスケットをあげ続けるように優しく言う。

グレイスはビスケットを2つ、3つ、4つと食べている。

注射の中の液体が半分以上、グレイスの血管へと流れ入ったとき …

5つ目のビスケットを口にしようとした彼女が全身の力を抜く。

彼女の呼吸は止まった。

そして、心臓も。

彼女は、家族みなに囲まれて、大好きなビスケットを食べながら …

虹の橋の袂へ、旅立って行った。

クリオが、泣いている家族ひとりひとりの顔を見ている。

クリオが、動かなくなったグレイスの鼻を一嗅ぎして立ち上がる。

立ち上がり、私の顔を一舐めしてから、廊下に出て水を飲む。

家族がグレイスを抱きしめている。

そして、彼女が最後まで食べてたビスケットのことで笑う。

泣き笑い。
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… なんて幸せな安楽死だろう。

愛する動物の最期は、こうであって欲しいと、心から祈る。
by yayoitt | 2017-03-02 04:39 | 動物病院レポート ケースから | Comments(2)
引っ越した後に残されていた犬、トビー
トビーは、3歳くらいの時に、彼女のもとにやってきた。

トビーは、シェルターで、彼女と出逢った。

彼女は、友人の付き添いでシェルターに行った。

そこで、自らが犬を連れて帰って来ることになったのだと。
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トビーは …

引越しをして、なに一つ家具も何も残されていない家の中で …

吠えていたのだ。

その家族は、すべての家財を持って、どこかへ行ってしまった。

トビーだけを、残して。

彼女は、それからずっとトビーと一緒だ。

吠えて、家の外を通った人が警察に通報して、トビーは助かった。

真冬の寒い時だった。

彼女は、ずっとトビーと一緒だ。

糖尿病のコントロールを続けているトビー

病院には、週に1度、血糖値を測る為にやって来る。

大きな体に、誰よりも優しいハートを持ったトビー

彼女は、彼を愛して止まない。
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ステラと、トビー。
by yayoitt | 2016-08-05 04:58 | 動物病院レポート ケースから | Comments(2)
魅力的な、きょうだい黒猫
先日、去勢、避妊手術にやって来た黒猫のきょうだい。

男の子と女の子。

きょうだい猫が手術にやって来ると、あるパターンがあって興味深い。

どちらか片方は、興味津々で度胸がある。

もう片方は、その猫の背後に隠れている。

まず、100%がそのパターンである。

この男の子と女の子。

最初は、男の子が動き回って辺りを見回したりして。

女の子は、その背後でじっとしていたけれど。

男の子が休むと、女の子のほうが動き回って探索するパターンだった。

写真は、両方とも手術後。
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男の子の手術の方が断然、早くて麻酔も軽いので、回復も早い。
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猫は、知れば知るほど、接すれば接するほど、興味深い。
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by yayoitt | 2016-04-14 04:07 | 動物病院レポート ケースから | Comments(4)
猫が猫トイレ以外の場所でオシッコやウンチをする意味
動物病院で働いていると …

実に多くの猫のご主人から

 トレイ(猫のトイレ)じゃない所でオシッコするんです …

という相談が多い。

そして、それが 治せないこと ものすごく問題 と頭を抱える。

時には このままじゃ安楽死しかないかも などと言う人も実際にいる。

猫とトイレ …。

それは、とても繊細で親密で、デリケートなこと。

たかがトイレじゃない。

彼らにとって トイレ は猫生の大きな部分を占めるのである。


猫トイレじゃない所で用を足すとき、あなたの猫が伝えたいこと

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 ☆左上から時計回りに☆

 あまり気分が良くないの

 (動物病院に行って、私が病気じゃないか調べてもらうときです)

 トイレが私のそうして欲しいと思うほど綺麗じゃないの

 (もっと頻繁に綺麗にして、そして新しいトレイに替えてください)

 トイレのある場所が、好きじゃないの

 (人通り、他のペット通りの多い所はやめて、でも、隅に押し寄せないで)

 トイレ用の砂が、好きじゃないの

 (無臭のとか、自然素材のとかを試してみては?)

 身体がトイレの大きさに、ちょうどじゃないの

 (屋根のない、私の身体の長さの最低1.5倍は大きいのが必要なんです)

 もっと、いくつもトイレが欲しいの

 (1猫につき、1トイレ、そしてもう1つ、準備してください … 

 つまり、3猫暮らしているのなら、最低トイレは4つ …

 そして、充分な間隔をあけて、家の色んな場所に置いて下さい)



英語を私なりに訳させて頂きました。

とてもとても、猫にとって大切で重大なトイレ事情。

汲み取ってあげたいです。
by yayoitt | 2015-11-02 06:09 | 動物病院レポート ケースから | Comments(13)
Archie と彼の愛する老人
Mr.W と 彼の犬、スプリンガースパニョルの Archieアーチー)。

私が彼らを知ったのは、動物病院で働き始めてすぐのこと。

もう10年近くになるけれど。

その頃からもう、アーチーは、太っていたように覚えている。

そして、Mr.W は既に、年老いていたように思う。

アーチーの体重は、増えるばかりで。

成犬となった彼の足は、体重の為に屈曲してしまった。

病院を訪れるたび、獣医師と看護師からの度々の体重コントロールを説明される。

それでも、体重はまったく、増加はしても降下はしないのであった。

数年前には、食事が原因の、膀胱内の結石が見つかり手術を受けている。

完全に4本すべての足が曲がってしまったアーチー

痛み止めの薬を、毎日のみ始めて数年が経っている。

その間にも、老人には何度か、体重を落とすようにと説明がなされている。

老人は、その都度に頭(こうべ)を垂れて、うんうんと頷くのだった。

しかし、体重が減る印はなく、私たち動物病院のスタッフも、諦めている感がある。
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同僚の1人から、ここ最近になって、私の携帯にこんなメッセージが届く。

彼女は、老人とアーチーの家の近くに住んでいるのだ。

けれど、つい最近まで、彼らが自分の勤める病院のクライエンツだと知らなかった。

 ”今日も Mr.W とアーチーが庭で日向ぼっこしてたわ”

 ”今日は Mr.W はアーチーとボールを投げて遊んでたよ”

 ”雨なのに、アーチーは Mr.W の庭仕事に付き合ってたよ”


そんなメッセージである。

なんて、美しい光景なんだろう。
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そして思うのである。

私たちは、ついつい、目だけで見える限られた範囲でしか物事を判断しない。

たとえば …

Mr.Wアーチーのことは、ほぼ 虐待 放置 と判断さえしていた。

けれど …

ふたりの間にある、本当の事実は、関係は、絆は、誰も知り得ない。

彼と、彼、ふたりだけの間でしか、わかり得ない。

彼らを取り巻く外の世界から、それは見えない。

虐待、放置と、判断を下すのは簡単なことだ。

反対にそれが、愛情の裏返し、深い絆の証だと見直すのは、容易ではない。

プロフェッショナルであるはずの、私たちでさえが盲目になってしまう。

見えない部分に、本当の真実があるということを …。

すべてのケースが、これに当てはまるわけではない。

むしろ逆のケースで、虐待を見逃してしまっていることが多いだろう。

目だけで見つめないこと。

耳だけで聞いたことを鵜呑みにしないこと。

事実は、単純ではないということ。

難しいのだけれど、とても大切なことだと … 思わされるのである。

Mr.Wアーチーの上に、穏やかな時間が流れますことを。
by yayoitt | 2015-08-03 03:14 | 動物病院レポート ケースから | Comments(0)
不公平だから
春らしい青空が心地良い日の午後 …

一本の電話が、真っ暗な雲を心の空に導くことがある。

忙しくも、やりがいのある仕事 …

その電話は

 ちょっと、アドバイスが欲しいんだけど

 え? いいえ、どこの動物病院にも登録してないよ


正直、話し方で、うっすら見えてくる、その女性の家庭環境。

 あのさ、私、最近、新しい仔猫を迎えたんだけど …

なにか、心配な症状でもあるのだろうか?

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 その子と、前から飼ってる2歳のネコがうまくいかないんだよ



 前からいるネコが、仔猫を虐めるんだよ

なるほど、そういうことも、あるよね、もちろん?

 だから、両方の猫の為にも、2歳のネコをアダプトしたいんだよね

え???

は????

ちょっと待て?

 あんたの病院で、アダプションとかやってる?

ちょちょ、ちょっと、何かがすごく、変じゃないか?

変なのは、この女性の頭の中だというのは、明らかだけど …

 一緒にいるのが、不公平だよ、この猫たちに …

不公平の、不幸の、元を作ったのは、貴女だよ?

しかも、どうして、新しい仔猫を迎えて、前から居るネコを追い出す?

と言うか …

どうして新しいネコを迎える前に、もしも上手く行かなかったら? って考えない?

何かが、ひどく、間違っていないか???

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 もしもし? 

 ねえ、あんたのとこで、何とかできない?


あまりに、物を言わずに沈黙していた私に、彼女も何か居ずらくなったらしい。

あくまでも、ビジネスとして、3つほどのネコのシェルターの名前を教えた。

 電話番号はわからないの?

それくらいは、自分で調べてくださいよ? ネットもするでしょ?

不満気な口調で じゃぁ、ありがとう と言って電話を切った若い女性。

どうして、こういう人が、動物を飼ってしまうのだろう。

それを言い出したらきりがないけれど …

可哀想な動物よ。

物言えぬ、飼い主を選べぬ動物よ。

本当に、本当に、捨てられる方も、そのまま飼われる方も、不憫でならない。


 







 
by yayoitt | 2015-04-10 04:57 | 動物病院レポート ケースから | Comments(4)
命の、繋がり
Lady(レディー) は15歳で、虹の橋を渡った。

愛するご主人ご夫婦に見守られながら …

14年の月日を締めくくり、眠りながら、旅立った。

晴れた寒い金曜日の午後。

その 旅立ち を手伝う為、獣医師と一緒に彼らの家に出掛けた。

ソファーの後ろの、ヒーターの横の空間。

 レディーの、いつもの場所なんだよ

と、70代の小さな体の彼女が教えてくれた。
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レディーが静かに、ここから、向こう側に旅立った後 …

両足が不自由で、外にもあまり出られないご主人の彼が言った。

 近い将来に、必ずまた、レスキューの犬を迎えたい

レディーは、小犬の時に、レスキュー団体から彼らの家にやって来た。

 だけど …

 レディーは、ぼくらにとって、それは特別な犬だったよ


獣医師が、ソファーで座ったまま愛するレディーの体を見つめているご主人に言った。

 Never think the new dog is a replacement for Lady
 新しい犬が、レディーの置き換えだとは、考えなくて良いよ


多くのご主人が、愛する命を見送った後に感じる …

新しい命を迎えることに、(前の)動物に対して後ろめたい気持。

 新しい犬は、レディーからの繋がりなんだよ

そう獣医師は伝え、座っていた床から膝を鳴らしながら立ち上がった。
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ひとりの人の人生の中で、共に時間を過ごすコンパニオンの動物達。

その、命の繋がり …

その人の人生を、より豊かなものにしてくれる愛しく尊い命の繋がり。

レディーの、まだ温かい体を抱きながら、獣医師の車で動物病院に帰る道。

金曜の午後は、雑踏。

ひとつに命が終わり …

けれど、すべては変わりなく動き続けていた。










 
by yayoitt | 2014-01-31 06:52 | 動物病院レポート ケースから | Comments(11)