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幼少の頃の思い出 ・・・ かぶるなちゅ
宝塚の ベルサイユのバラ に恋焦がれていた保育園児。
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あの、たなびく金色の髪が、どうしようもなく羨ましくて。

赤い頬の小さな子供は、母親に言われるままに床屋に行き、男の子のように短い髪をしていたんだっけ。

3人娘の末っ子として生まれた私は、幼い頃いつも、母親によって男の子の格好をしていた。

お祭り、お出掛け、保育園の行事 ・・・

特別な時には、スカートではなくパンタロンを履き、幾何学模様のベストで、ポッコリおなかを隠し、短い黒髪に赤いほっぺたを引きつらせていた。
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7つと9つ離れた姉2人は、お尻に届く長い髪が自慢で、お揃いで結ってあった。

 どうして、姉2人はスカートのお揃いで、私はいつもパンタロンなのだろう?

 どうして、姉2人は長い髪を母親に毎朝結ってもらい、私は3cmなんだろう?


幼少の子供にとっては、母親の言うことは絶対で、逆らうことは知らなかった。

自分はこうしたい、という思いすら、口に出すことは思いも付かなかった。

その頃の写真を見てみると、殆どがパンタロンにチョッキや大きな襟付きシャツ姿。

斬新でカッコいい ・・・ と今なら母を敬うが、当時の子供だった私は、それが嫌で嫌で仕方が無かった。

そのくせ、どうしたら良いのか、そんな術も知らなかった。

母親という人は、私が物心付いた時から、そして今もなお、同じ髪形をしている。

彼女の黒髪は、お尻の割れ目までも長く、それを頭の上で結って上げてあるのだ。

小さく、泣き虫で、苛められっ子で、夢見たがりの少女は、夜になると母親の背中にくっついた。

 かぁちゃん、なぁ、あれやって、髪の毛、やって

面倒くさそうにも、結ってある髪の毛を、だらりと下ろしてほどいてくれる母。

その髪を小さな両方の手で掴むと、自分の頭の上に乗せて、鏡を見た。

 かぁちゃん、やっこがもしな、髪の毛長かったら、こんなんなるんやな

テレビを見ながら、うんうん と頷く母は、背後で何度も髪を引っ張られながらも、ジッとしていた。
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ある夕方のことだった。

赤いホッペは考えていた。

 保育園に、長い髪の毛で行きたい ・・・

小さな頭の、小さな脳みそをふる回転させて考えた。

 かあちゃんの髪の毛を使うことはできない ・・・

 何か ・・・ 何か ・・・

 あっっ ・・・


自分のひらめきに、心が激しく揺れ動いた。

タンスの引き出しを開けて、その上に登ると、小さな観音開きがあった。

そこから、一枚、取り出した。

                タオル
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白いタオルを、頭に乗せると、頭全体が覆われた。

両耳にタオルを引っ掛けると、しっかり固定された。

その夜は、ずっとタオルをかぶっていた赤いほっぺた

右手で、タオルの端を肩の後ろへやる、そんな仕草がずっとしてみたかった。 

気分はすっかり、ベルサイユのバラ の オスカル だった。

慣れない手つきで母親の黒いゴム輪を使い、頭の上のタオルを後で縛ってみる。

ポニーテールだった。

ドキドキする、ワクワクする。

長い髪の毛、長い髪の毛、お姉ちゃんやお母さんみたいな長い髪の毛。
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翌朝、いつもは行きたくない保育園なのに、早くに目が覚め、早速白いタオルをかぶって両耳を掛けた。

 みんな、どんな顔をするだろう ・・・

保育園まで送って行ってくれる母が言う。

 はい、やっこちゃん、タオル取ってな、保育園行くでな

やっぱり、母の言葉には逆らえなかった。

保育園には、長い髪をなびかせて行けなかったけれども、それから毎晩、タオルを頭にかぶって過した。

小さな田舎の女の子は、それを かぶるなちゅ と呼んだ。

かぶるやつ を舌が廻らずに、そう呼んだんだった。

 かあちゃん、かぶるなちゅ、取って

 かあちゃん、やっこのかぶるなちゅ、どこ?


数年後、ようやく自分で床屋に行く、行きたくないの意思表示ができるようになると、
かぶるなちゅ はもう、いらなくなった。
by yayoitt | 2008-03-19 05:55 | 思い出
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