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動物の視線 動物の心
私の勤める動物病院には、犬用のケネルが5つ(大3つ、小2つ)と、猫(小動物)用ケネルが4つある。

ケネルの中に、すんなり自ら入ってくれる犬は少ない。

殆どの犬 は、私達に抱えられてか、その動かなくなった足を1つ、また1つ、とケネルに入れてお尻を押して中に入れる。

            背が低い私のお気に入りの技は ・・・

リードを付けたまま犬の先に立ってケネルに自ら入り、それに付いて犬がケネルに入ったら私が出て来る方法。

一旦、ケネルに入ると、犬たちは落ち着くことが多い。
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だが中には、ケネルに入っている間だけ、怯えて凶暴になる子も入る。

              考えられる理由は ・・・ 

ケネル という壁に囲まれた空間、逃げ場のない狭い空間の中で、脅迫間を感じて怯えるのである。

そういう子たちは、ケネルから外に自らの足で広い空間に歩き出させてあげると、すっかり元の甘えん坊に戻ったりする。

凶暴性 = その原因はいつも、恐怖心から来る のである。

行き場のないケネルの中にいる犬の前に、人間が立ちはばかり、躊躇なく目を見開き、犬の目を直視すれば、それは怖いに決まっている。

脅迫というメッセージが、ダイレクトに送られるのは仕方がない。
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 の場合 ・・・ 

匂いと周囲の音や雰囲気に非常に敏感な彼らは、殆どがケネルの奥の壁に身体を押し付けて丸くなって自分の体の影に隠れようとする。

タオルをクシャクシャと一枚入れて 防空壕 を作ってあげるだけで、少し安心したりする。

彼らは、とてもとても繊細な動物だと驚かされる。

今日の午後、空っぽのケネルの掃除をしながら考えた。

ケネルの中で動物たちは、何を見、何を聞き、何を匂い、そして何を感じ考えているのだろう ・・・。

彼らのその経験、その不安、その苦しみは、わかりえない。

予想することは出来ても、同じ気持ち には、なりえない。

ずっとしたいと思っていたことを ・・・ やってみた
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            ケネルの中に入ってみた

少し身体を動かすだけでステンレスに響く音が大きく聞こえる。
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         ケネルの中から見た外の景色 なんだか怖い

もしもそこに誰かが立って自分を見下ろしていたら ・・・
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         状況の理解できている私だって怖くなってきた

このケネルの中で過す命 ・・・。

愛する飼い主さんから突然に引き離されて、知らない人間と、知らない動物たちの啼き声や色んな匂いで充満された、このケネル

どんなに寂しいだろう、どんなに不安だろう、どんなに怖くて堪らないだろう ・・・。

相手の視線にまで下りてみないと、わからないことは沢山ある。

相手の視線に合わせても、見えない、理解できないことは無数にある。

せめて同じ言葉を共有しない彼らを、どうしたら 大丈夫 と伝えられるんだろうか?

ケネル の中に入って考えてみても、すぐに答えは見つからない ・・・。
by yayoitt | 2007-08-22 02:32 | 動物病院での出来事、仕事
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