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喧騒を抜け出し北へ~~2
ダンケルドの町 を少し外に出た所に、マイケルが私に是非見せたかったという 自然公園 がある。

Dunkeld Hermitage Walkである。

Braan川 の流れる森の小道を15分ほど歩くのだが、この森の木々は、ヨーロッパで最も背が高い木が含まれている。

川の流れの静かな音色が、徐々に、怒涛の音に変わっていくのがわかる。

風に乗り、微かに頬に水しぶきがパウダーの膜の如く触れている。

古い石橋を渡り、その景色が開けた!
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そこには、高さこそは余りないのだが、たっぷりの水をゴウゴウと落とし続ける、滝があったのだ。
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連日の雨で、水の量に恵まれ、その姿は堂々とずっしり、それなのに常に姿を変えながら水しぶきを噴出していた。

スコットランドの水は ピート(燃料としても使われる土壌の1つ) が沢山含まれている為に、茶色い。

この滝も、やっぱり、茶色かった。

写真も撮るのを忘れて、その立派な姿に、口を開けたまま見とれていると ・・・

何かが ・・・ 飛んだ!!!

もの凄い水圧で落ちる滝つぼから、何か黒い長い物が ・・・

ほらまた、飛んだ!!!

崖の先でカメラを構えるマイケルを大声で呼び、彼と一緒に目を凝らしていると、今度は確かに、はっきりとその形が見えた。

 である。

どう見たって絶対に無理だ、あんな水量の滝をのぼるなんて・・・。

マイケルも私もしばらく、拳を握ったまま息を呑んで立ちすくんでしまっていた。

飛び跳ねては、簡単に戻される、そしてまた力の限り、飛び上がる、そして水の泡の奥深くへ消え去る・・・。

子供を産む為に、子孫を残す為に、必死に自然と戦う命、その神秘と自然の酷(こく)さに言葉が出なかった。

親魚は川を上っている間 餌を取らない という。

産卵・放精後、親魚は、1ヶ月以上生きて産卵床を守ることもあるが、大半は 数日以内に寿命が尽きて死ぬ と言う。

稚魚の頃、この同じ滝を下りて行ったのだろう、そして、同じ故郷の水に、産卵の為、そして自分の死場として帰って行くのである。

同じ森を、小雨がぱらつく中歩いて帰りながら、、マイケルも私も神妙に無口になっていた。

命のこと ・・・。

自然のこと ・・・。

人間のこと ・・・。

命のこと ・・・。

自然のこと ・・・。

 “ なぁ、マイケル、もしもな、今晩の夕食に サーモン があったらどうする? ”

 “ ・・・ う~~ん、今晩は、食べられないなぁ ・・・。 ”

 “ そっかぁ ・・・。は、これを機会に、ベジタリアンになってみる? ”

 “ ・・・ うっ ・・・。そ、それは ・・・。というか、こんなの卑怯だぁ ・・・。 ”

 “ そうやな、ごめんごめん!! ”

なんだか嬉しくて、でも寂しくて泣きそうになり、わざと飛び跳ねたりマイケルの尻を叩いたりしながら、2人して駐車場まで帰って行った。

                        3に続く
by yayoitt | 2006-10-15 00:32 | スコットランドフラリ旅
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