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日本滞在紀 第十二章 そして みんな、泣いた 3
車に乗って父と母と3人で家に帰る途中、寿司屋(お持ち帰りの店) に寄った。

この飛騨で両親と夕食を食べるのもあと、明日一日 だけだ。

私専用に、かっぱ巻きとか梅巻きとか、そして両親も私と同じ野菜物の寿司を何本か買った。

家には、私のリクエストで母が炊いてくれた 味ご飯(五目御飯) もある。

                  炭水化物ばんざい である。

3人で、寿司を切ったり、ご飯を盛ったり、お漬物を冷蔵庫から出したり準備をし、まるで日常と変わらない夕食を3人で食べ始めた。

私は、さっき会ってお別れを言って来た 幸ちゃん と ゴールデン のことが正直頭から離れなかった。

口数少なげに、母の作ったご自慢の味ご飯に舌鼓を打っていると、父が切り出した。

 “ かわいい(=かわいそう)なぁ・・・、あの犬なぁ、あんなに人懐っこいとは知らんかったわぁ 

私が、ずっと心に抱えていたことを口に出した。

 “ まさか、あのご主人さん、面倒やって言って 保健所なんかに連れて行かんにゃいいけどなぁ・・・ ”

そして、付け加えた。 

 “ 皆、勘違いしとる人が多いんやけど、保健所での処分は、安楽死ではないでな・・・ ”

父と母が目を上げて聞く。

 “ 安楽死ではないんか? ”

そこで私は、今までブログやここで出会う友人や勇気ある人々から私が得た情報を、話して聞かせた。

 “ 毎日な、移動させられるんやよ、ガス室行きの前日の部屋まで、あと6日、5日、4日って・・・。 ”

 “ でな、床は冷たくって誰も触りに来てくれんし、お母さん犬と仔犬も一緒やったり ・・・ ”

今まで見てきた映像が蘇って、私は言葉を失ってしまった。

両親の前で、37歳の娘が、大泣きしてしまった。

私の顔を見れなくなった母が泣き出した。

そして、深呼吸をして話し始めた時、父も隠さずに泣き始めた。

そして みんな 泣いた

犬たちの命を思って、泣いた。

私は両親にお願いをした。

もしも、犬を飼っている人が、簡単に保健所に連れて行こうとしているのを見たり聞いたりしたら、どうか、保健所では安楽死ではない、ということを伝えて欲しいと

また、そういう人に会わなくても、何か機会があったらどうか、伝えて欲しいと

犬が苦手な母も、“ かわいそうになぁ・・・ ” と涙を拭いながら “ おう、わかったぞ、わかった ” と言ってくれた。

3人の食卓には、ただ鼻をすする音、寿司をつまむ音がしばらく、続いた。
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                写真はカッタンさんからお借りしています
by yayoitt | 2006-07-02 22:05 | 06 羽伸ばし日本旅行
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