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日本滞在紀 第十二章 そして みんな、泣いた 2
幸ちゃん のことを思って、別れを惜しみながらも微笑が止まらない私は、父と共に歩きながら次の通りの角に位置する、大きな家の前まで来た。

この滞在中、もう3回は会いに来ているので、その大きな体は私の声を聞くと、湿った毛を左右上下に揺すぶり、フェンスを端から端へと移動した。
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燃えるような毛色の ゴールデンレトリバー である。

少し後ろで、地面に背中をこするようにおなかを撫でろという彼を見つめていた父も、ゆっくりと手を伸ばしてきた。

 “ おおおおお、こんなに人懐っこかったんかぁ~~、いっつも吠えるもんでよなぁ~、知らんかたわい ”

父を誘って、敷地内に入り、小屋の背後から直接 彼に会いに行った。

やっぱり前に来た時と同じ、ウンチもオシッコも小屋の前にあり、彼が寝転がるとウンチを背中で踏みそうになった。

大きな四角い器の水は、虫が何匹も浮いていた。

しばらく父と一緒に、おなかを撫でたり口に手を入れたりして遊んでいると、音を立てて車が1台フェンスの前に入ってきた。

この家のご主人 らしく、一瞬、その犬は注意をそちらに向けて立ち上がった。

車を降りる 50代くらいの男性に、笑いながら挨拶すると、彼も笑いながら近付いて来た。

彼はフェンスの向こうに立ったまましばらく会話を交わした。

犬の年齢を聞くと、“ ええっとお・・・じいちゃんが亡くなって今年でぇ・・・ ” と考えたまま、はっきりした答えは返ってこなかった。

お爺さんが亡くなる年に、この家にやって来たのだろうか?

私がおなかを撫でたり手の甲を噛ませて遊んでいるのを微笑んでみながら、おじさんは “ まったく、でっかいだけや ” を繰り返していた。

私はいつも思う。

犬を外で飼っているとなかなか、人間と心が通じ合えない、一緒に生活を共にするからこそわかること、気がつくこと、犬に対して抱く感情が生まれるものなのである


飼い主であるこのおじさんに、私は何も言えないけれど、せめてこの犬が、いかに命として大きな価値があって愛されるに値するものかを伝えたく、

 “ 本当に良い子ですね、性格が良い、賢いし、かわいい人懐っこい優しい子ですね ” を繰り返した。

おじさんは、困ったような笑顔でまた、 “ おっきいいだけや ” と言った。

照れた笑顔を浮かべるおじさんは、私たちが礼を言って立ち去る時振り返ると、犬を見るわけでも触るわけでもなく、家の中に入って行った。

幸ちゃん とそして、名前は聞きそびれたが でっかいゴールデン ・・・。

彼らが よく吠える のには、訳がある、理由がある

ストレス である。

屋外 という環境は、車も通れば人も通る、様々な音や匂いが常にして、犬にとっては決して気が休まらない。
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そのくせ、側に行って確かめることができないから、ただただ情報だけをむやみに受け取り背負うしかない。

そんな中でも見慣れたもの、聞き慣れた音、嗅ぎ慣れた匂いには気を張らなくてもいいが、郊外は状況が常に変化している為に、24時間心は休まらない。

そこに、運動不足が発車を掛けて、ストレスはそれは大きくなるのである。

幸ちゃん の家
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 を、さっきとは違って沈んだ気持で通りすぎながら、すっかり口数が減った父と私は、鼻歌でシャンソンを歌っている母の待つ、車へと向った。

             最終 そして、みんな、泣いた 3 に続く~~
by yayoitt | 2006-07-02 17:54 | 06 羽伸ばし日本旅行
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