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仕事を辞めたいと思う瞬間
真っ白なふわふわのコートを着た その子は、Jambo ジャンボ

ジャーマンシェパードドッグ である。
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遺伝なのか、白い毛の犬特有なのか、ジャンボ はとっても皮膚が弱い。

最近は、お尻の周りが爛(ただ)れて、毛を剃って乾燥させようとしたが結局、皮膚が何重にも重なる部分の為にそれが不可能で、じくじくしたまま。

口腔内にも爛れができて、食事を楽しんで食べられなくなってしまった。

ジャンボ と8年も一緒に暮らしているご主人は、何度も何度も、出来る限りのことをしたいと願って、彼女を病院に連れて来た。

先週、その重なるお尻の皮膚を、ぴんと張る手術を計画し、今朝がその手術の予約日だった。

この手術は、他に薬や軟膏でもっての効果が得られない為の最終手段としてとられた策であった。

朝、予定では8時半から9時の間に ジャンボ を 私達に預ける予定であった ご主人 ・・・。

9時半に ジャンボ と窓口に現れたが、“ ブラウン先生に、話がしたい ” と一言。

今まで既に何度も、1日預かっては、色んなことを試されてきたが駄目だった ジャンボ

先週、毛を剃り直し軟膏を塗り続けたお尻は痛々しく爛れたまま、口の中の爛れも重なり 元気のない ジャンボ

私達は、すぐに ご主人が 何をブラウン先生と話したいのか見当が付いた。

度重なる治療、小さな手術、そしてそれが全て効果をなさず、保険も入っていない為に治療費だけが重なる ・・・。

窓口から見える ジャンボ

真っ白な綿毛の中で、舌を出してご主人を見つめては、物音に耳を澄まして玄関の戸口に向おうとしている。

 ・・・ 私は 今でも この瞬間が 大嫌いだ。

 ・・・ このまま 目を閉じて耳を伏せて、動物と主人の姿も見ない、声も聞こえない所に逃げたくなる。

 ・・・ でも それなのに いろんなことを想像してしまう。

 ・・・ 最後の夜を どんな 思いでご主人は 愛する動物と過したのだろうか。

 ・・・ 今朝 目覚めて ご主人は 何年もそうしてきたように 変わらずに おはようを言い 花の頭にキスをしたのだろうか。

 ・・・ 動物たちは ご主人の目を見つめて 何を思うのだろうか。

 ・・・ 本当は 何もかも 今からどこに行くのかも 知っているんではないだろうか。


毎日のように、何度も何度も繰り返して経験してきた 安楽死 ・・・。

頭の中ではそれが、動物に対する 優しい選択 であり、人間にとっては 悲しい選択 であることも知っている。

それなのに、どうしても泣かずにはいられないのだ。

いつも、その切ない寂しい昇天 を目の当たりにすると、いまだに この仕事を選んだことを深く後悔してしまう ・・・。

肩を震わせて、去って行ったご主人の涙が一杯落ちた ジャンボ の真っ白な綿帽子 ・・・。

まだあったかい ジャンボ を抱くと、周りが何にも見えなくなった。
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by yayoitt | 2006-06-27 03:05 | 動物病院での出来事、仕事
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