人気ブログランキング | 話題のタグを見る
TOUCHING THE VOID
TOUCHING THE VOID_c0027188_1956125.jpg
昨夜、テレビで映画を見た。前々からうわさは聞いていたので、いつか是非見たい、と思っていた、ドキュメンタリー映画だ。2003年 “ TOUCHING THE VOID ” 英国の映画だ。
かなり話題を呼んでいたので、日本でも沢山の人々が、ウェブ上で評価したりしている。
本の出版が最初で、それを元に、映画化されたわけだが、部分ドキュメンタリー、部分リクリエーションで、本は(日本題名『死のクレバス アンデス氷壁の遭難』)、作者の実体験を元に描かれており、映画には作者本人と、彼の友人のクライマーが、解説に常に登場する。
本を書いたのは、JOE SIMPSON という英国人だ。
時はさかのぼって1985年、場所はペルーはアンデス山脈の高峰シウラ・グランデ (6356m)。英国人登山家 JOE SIMPSON と SIMON YATES は、若く、経験豊富で、
その山への試みは初めてであったが、3日間に渡る登頂の成功をおさめ、その下山中に、長い物語は始まった。深い雪と氷に覆われた山腹、彼らは真っ白く輝く世界を見渡しながら下山をしていた。下山と言っても、アイスの上を、ザイルを使っての下山だ。
JOE SIMPSON が、短距離ではあったが滑落してしまい、片足の骨を何本か骨折してしまった。レスキュー隊が来るチャンスは全くない為、パートナーの SIMON YATES が、JOE SIMPSON を引っ張って降りる、という、莫大な時間のかかる、しかも、痛々しい方法を取るしかなかった。SIMONは必死に、彼の怪我をして苦しむパートナーJOEを身体に下げたまま、アイスの上を降りていたのだが、彼の気付かない間に、後ろに引っ張られていたJOEの身体が、クレヴァスの入り口に来てしまう。そして、JOE の身体はクレヴァスへと滑り落ちる。深いクレヴァス、一度堕ちたら生還は出来ない、そこにぶら下がり、叫ぶJOE。そのJOEを必死で引き上げようと懸命になるSIMON。しかし、ぶらさがる身体の重みで、SIMONも、どんどんクレヴァスに引きずられていく。選択は、2つ。
1. そのまま、二人ともクレヴァスの中へ落ちていくか。
2. SIMONが、2人をつなぐザイルを切り、一人の死、1人の生を選ぶか。
SIMONは、クレヴァスへ自分の身体も近付いていくアイスの上、ザイルを切ったのだ。
深い冷たいクレヴァスに、自分の選択で、落ちていく友人の叫びを脳裏に焼きつけながら、SIMONは苦悩の下山をする。複数の骨折、そして、クレヴァスに落ちたJOE、なんと、彼が、深いクレヴァスの途中まで落ち、まだ生きていたのだ。しかし、骨折した足を抱え、充分な食料も水もなく、クレヴァスの深い溝の中、どうして生きて地上へ戻れるものだろうか。だが、彼は、その遭難から7日後、何と、SIMONと再会することになるのだ。この7日間の、SIMONのとてつもない罪悪感と自責の念、友人を自分の命を選択する為に死へと追いやったという苦しみ、一方、JOEの、生きることに対しての執念と信じがたい人間の身体、精神の力、苦悩の日々が始まるのだ。彼らが奇跡的な生還を果たして、英国に帰ってきた時、SIMON は、マスコミや国民から多くの非難を受けたという。それを JOE は、いつも否定し、SIMON の選択は正しかったと主張して来た。クライマーは、常に、選択をする。行くのか行かないのか?進むのか帰るのか?生きるのか死ぬのか?  
この選択は、もちろん、生きるを選択するに違いないが、このSIMONとJOEの状況で、クライマーが選択すべきこととは…。7日後の、変わり果てたJOEの身体を抱きしめながら泣くSIMONに、JOEは言う。“俺だって、同じ選択をしたさ”
この映画の中で、極限状態に陥ったJOEの、死に限りなく近い時期の経験が、とても興味深く、またユーモアがあり笑える。以前、日本でのヨットレースで遭難し、数人のクルーが救命ボートで漂流するという本を読んだことがある。食べ物も無い為、1人、また1人と、目の前で亡くなっていく仲間を見ながら、彼らの遺体を水葬し、最後に生き残った男性が、孤独、飢え、乾き、疲れと戦いながら、カモメを自力で捕って食べて、救出された日本人男性の話だ。
彼が救出された時も、“仲間の肉を食べたのか?”という、質問がマスコミからあがった。
タイトルを忘れてしまったが、救出後のマスコミとの葛藤や、リハビリの様子も興味深くて、忘れられない本だ。人間、死と隣り合わせになった時に、選択を迫られることは、歴史上よくあることである。自分だったらどうするか?必ず皆が、その映画を見て、また、本を読んで考える。私なら、どうしたか?
。。。。。。
映画の中で JOE が言っていた言葉が、忘れられない。
“死ぬのなら、1人では死にたくない。誰かの側で死にたい。”
彼の、死への願いが、彼を生かしたのかもしれない。
by yayoitt | 2004-11-05 19:55 | 英国暮らしって...
<< Norman、 いとこ に会いに行く スコットランド風 従業員パーティー >>