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すっとこナースの思い出 4
小児科病棟でのお笑い出来事は、ありすぎて全てを覚えていないが、印象的なことは今でもありありと思い出す。ある深夜の勤務中のことだった。
小児科側の詰め所で私は1人、患児達のカルテ記録をしていた。開け放してあるドアを誰かがノックしたので見ると、大部屋の短期入院の子供のお母さんだった。小さな子供の入院時、お母さんや保護者の方が希望されれば一緒に泊まって頂いていたのだ。お母さんは、眠そうな目だけれど何かいぶかしげに私に話した。“看護婦さん、隣の部屋から誰かがずっと叫んでるよ。なんか、なんとかじゃぁ、なんとかじゃぁ、って”?なんとかじゃぁ?寝言かなぁ?寝言にしても古典的な寝言だなぁ?私は、“なんとかじゃぁ”という言葉が気味悪く感じて、彼女に部屋に戻るように伝えてその隣の病室へと懐中電灯1つで向かった。隣の病室とは、養護学校に通う男の子達が6人寝ている部屋だったが、部屋に入る前から、何か物音が聞こえる、そして、聞こえた!なんとかじゃぁって言ってる!こりゃ一体、なんなんじゃぁ?怖さと戦いながら、部屋に入ると、その音の正体はすぐに私にはわかった。窓側のベッドで眠っている太った男の子の机の上、目覚まし時計だった。目覚まし時計は、何故こんな夜中にセットされたのかはわからないが、“なんとかじゃぁ”のなぞも解けた。この目覚ましは、日本のお城と侍達を形とったもので、初めて聞く目覚ましの音はこうであった。
まず“ほら貝”を吹く音♪ファアァァン、ファアァァン♪それに次いで、沢山の侍の声、そして“出陣じゃぁ、出陣じゃぁ ファアァァン、 ファアァァン”と繰り返すのだ。
「信玄くん」とか言う目覚ましで、大河ドラマ「武田信玄」がブームになった時に発売されたらしい。私は、6人の子供達が仰天するような寝相で寝ているのを見ながらも、この出来事が可笑しくて真っ暗な部屋の中、1人で声を殺して笑いながら、何とかその目覚ましを止めた。
隣の部屋で、まさか“出陣じゃぁ、出陣じゃぁ”と馬に乗った侍が闊歩していたとは知る余地もないそのお母さんには翌日、“あれから静かになりましたが、お母さん眠れました?”とだけ尋ねておいた。それにしても、人騒がせな目覚まし時計だった。
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by yayoitt | 2005-01-05 03:24 | 看護婦時代
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