人気ブログランキング | 話題のタグを見る
プラネタリウム
ずっとずっと、憧れていた。

田舎の空を見上げると、広がる宇宙(そら)に。

それが、宇宙(うちゅう)とか惑星(わくせい)とか …

そういう魅惑的な名前があることを知る前から、ただ、焦がれていた。

未知というものに、抱かれるような不思議な気持を、子供ながらに感じた。

心配性の子供は、暗い夜が怖くて泣くくせに、星の夜をこよなく愛した。
プラネタリウム_c0027188_4321763.jpg

漠然とした憧れ、恋焦がれにも似た思いは …

ETという衝撃的で感動的な映画の登場でもって、確定的なものとなり。

手を伸ばしても掴みとれなかった、畏れ多すぎた憧れから …

もっと手の内におさまり、こよなく愛することができるのではないかと …

そんな想像の世界と入り混じり

宇宙(そら)は、現実的であり、想像のすべてでもある存在になって行った。
プラネタリウム_c0027188_4324923.jpg

そんな子供の私が、その名前をはじめて聞いた時の興奮は忘れられない。

外国の、きっとアルファベットの文字、それが音になって耳に届く。

私の思い描ける、どんなものであっても、それは計り知れないような。

 プラネタリウム

そこでは、真昼に星に会えるのだという。

座ったままで、建物の中にいながら、宇宙に会えるのだという。

あの頃、大学生で名古屋にいた姉が、小学高学年の私を誘ってくれた。

名古屋に行って、プラネタリウムを見る。

田舎の小学生は、プラネタリウムという名前すら知らなかった。

クラスメイトに自慢した。

 プラネタリウム、見にいくんやよ

 なんかな、ぶあ~って天井が星だらけになるんやって

 すごいな 綺麗なんやって

 椅子に座ったまんまで見るんやって

プラネタリウム_c0027188_4331064.jpg

そして、名古屋まで数時間の電車のひとり旅をして。

名古屋の姉と、共に行ったプラネタリウム。

沢山の人が並んでいるのが凄い。

部屋に入ると、耳の鼓膜が押しつぶされる感覚が凄い。

丸い部屋の真ん中にある、宇宙的な望遠鏡のようなものが凄い。

すべてが、そのすべての経験が、凄かった。

小学生の私は、暗闇で、星の誕生の様子を目の当たりに見つめながら …

ひとり、空に浮き

天井を抜け

真昼の名古屋の街を抜け

大気を抜け

宇宙の空間へと導かれるのだった。

ざわめきが耳に戻った頃、部屋の2つのドアは開け放たれ …

部屋の電気が顔に落ちていた。

隣の姉もまだ、今はなにも映し出さない天井を見ていた。

私は、泣いていた。

 おかあさん~ すっごかったねぇ~

と、通り過ぎる子供たちの声がした。

あれから、プラネタリウムと宇宙は、少しだけ遠くにある。
by yayoitt | 2014-05-17 03:19 | 思い出
<< 時代を超え、語り継がれ、愛され... 女性の年齢は〇〇に出る >>