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すっげぇ~嬉しい再会
木曜日、仕事帰り、エージンバラの駅前で両親と待ち合わせた。今日と明日は、バイトのワン子達はご主人とお出掛けなので、ノーマンを散歩に連れる4時頃まで時間があるのだ。電車を下りて駅を出ると“3分前に着いた”という両親が、メイン通りのエージンバラ1の豪華なホテルの前で待っていた。人ごみの中で、小さな2人が、遠くから私を認めると、肘をピンと伸ばして手を大きく振り、父なんかおどけて足を振っていた。

そのホテルは、バルモラルホテルといい、確か2000年の年越しの時には、デヴィットベッカムが夫婦で最上階に泊まったはずである。私は、一度隣接するパブにサッカー観戦に入っただけで、ホテルの中には入ったことがない。

赤いカーペットが敷かれ、お客の到着を、バグパイプ奏者がパイプの音で出迎えたりするし、客も私のような平民とは違うので、かなり近寄り難かった。でも、両親が、このホテルでコーヒーを飲みたい!!と強く希望したので、3人で行くことにしたのだ。

入り口から入って左手にフロントデスクがあり、そこで長身のニコニコスマイルの係員に尋ねた。 “コーヒーを飲みたいんだけど、隣接のパブじゃなくって、カフェはこのホテルの中にあるの??ほら、すっごいポッシュなカフェね。”

ポッシュ=POSH とは、豪華な、上流階級の、ぜいたくな、 という意味だが、金持ちを非難する意味合いを含んで使うことが多い。 私なりの、英国式ジョークであった。長身の係員は、ほがらかに私のジョークに微笑むと、私達を建物中央のティールームへ導いてくれると、空いている席に案内した。

丸く高い天井をぐるりと顔で弧を描きながら見上げて歩く両親 … かわいい。

深い重い椅子に座って、メニューを見ていると、その場のマネージャーという女性が“こんにちわ、ご機嫌いかが?”と挨拶に来たのでかしこまってしまった。“今、係りの者が注文を承りますから、ごゆっくり”と言って去っていった。コーヒー一杯で、もう2人の従業員が私達に丁寧に関わっている。すごいな~、すごいな~、と3人でぐるぐる頭を動かしていると、優しい声の男性が隣に立ち尋ねた。

“こんにちわ。何がよろしいで…”と彼が言い終わらないうちに、彼の顔を見て私が立ち上がった。

“ピーター!!”

ピーターと叫ばれてビックリしている彼は次の瞬間に“Oh my goodness!Yakko!!”と言った。彼の頬にキスして、しばらく驚き合いながら話をしたが、余り長く引き止めるわけにもいかない。

4年ぶりの再会であったピーターは、私が初めてエージンバラに来て1年半働いたホテルの、レストランのマネージャーだった。私より4つ上、アイルランド出身の彼とは、マネージャーとしてだけではなく、私生活でも色んな話をしたり一緒に遊びに行ったりした。やっこ~、やっこ~ と優しい声で呼んでくれ、ある時は、新しいシェフに差別的な言葉を言われた時に、面と向かって彼に講義してくれたりもした。あんなに繊細で、強く、それなのに少しぶつけたら壊れるくらいもろい、心の持ち主は他に知らない、と言ってもいいくらいだ。彼は、あの頃、“もう11年”と言っていた年上の男性と今もずっと一緒にいるということだった。その年上の彼氏は、奥さんも子供もいたが、ピーターとの恋愛を貫く為、全てを捨ててきたのだった。20になる綺麗な娘さんが彼らの所にしばらく滞在した時には、一緒に皆で飲みに出掛けたが、途中で彼女とそのお父さんとの言い合いが始まって、その2人だけ家に返し、心配するピーターを元気付けながら踊りに出掛けた。ピーターは、お酒を飲むと急に人が変わって、何もわからなくはなるし、前を歩く男の人のお尻を触ったりするので、誰かが一緒にいないといけない。喧嘩に巻き込まれても仕方がない…

そんな、他人の面倒を看るのが好きで、他人に面倒を看てもらわなくてはいけない彼が愛らしくて仕方がなかった。

多分、4年経った今も、同じ様に週末は踊りに出掛け、べろべろに酔っ払い、パートナーをどこかで見失い、何とかタクシーは拾って家に帰る、そんな姿が、思い出が、彼のやさしい声と笑顔と共に、一瞬のうちに蘇ってきた。懐かしい話をしながら両親を見ると、“2人の再会の様子を見てたら泣けてきた”と、母が泣いていた。帰りに、バグパイプ奏者の人と両親を並べて写真を撮り、ピーターに新しい電話番号を渡したら、“土、日は休みなの?だったらまた一緒に踊りに行かなくっちゃ。電話するから”と、ピーターらしい返事だった。

外に出て、暑いくらいの日差しを浴びたら、鼓動が早くなりだした。
 すっげぇ~嬉しい再会  _c0027188_20224459.jpg

by yayoitt | 2005-06-10 20:23 | 英国暮らしって...
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