蟻(あり)を潰す人
母方の祖母の思い出は …

私と彼女自身の出来事より、彼女の長女である母の話が色濃く映る。

祖母と確かに、一緒に旅行にも行ったり、食事をしたりしたけれど。

私が子供だった頃、共に過ごした時間の記憶がない。

彼女が立てなくなった晩年に、彼女の家に見舞った覚えの方が強い。

彼女の長女である私の母親。

彼女は、母親である ナミさん を、愛して憎んでいる。

同じ日本兵の手によって、生きたまま海に投げられて死んだ夫の妻。

戦後の貧しい時代であったけれど、他の人々より更に貧しかったという。

女手ひとつで4人の育ち盛りの子供を育てあげた ナミさん

家もなく、仕事もなく、窮地に立たされ …。

長女の私の母だけを残し、男の子2人と女の子1人を里親に出した ナミさん

間もなく、3人の子供の頭を抱きながら家に帰ってきた ナミさん

孫の私たちに対する言葉は、いつも、お金のことだった。

 お金は大切にしれよな

 今度な、お金をあげるでな

 今日はな、お金を準備しとらんでごめんな


そういう祖母から貰うお小遣いというのは、ほとんどなかった。

それだけ、なかったお金への執着が強い、そういう人生だったのだろう。

私の母にとっては、愛しい母であり、反面教師でもある ナミさん だ。

母が ナミさん の苦労話と一緒に、よくしてくれる話がある。

ナミさん の苦労話は、私にとって想像がつきかねる壮絶なもの。

そういう ナミさん を、とても尊敬する。

 ばあちゃんは、頑張って生き抜いたんやなぁ …

と、しみじみ思う。

そういう苦労話を語る母の表情は、優しい。

けれど、その表情が、とても憎々しいものに変わると …

母は、俯(うつむ)いて、唾を吐き捨てるような口調で語るのだ。

 ナミさんはな …

 虫なんかは、なんでも殺す人やった

 アリがおったら、指でぎゅっ、ぎゅっ って潰すんや

 あの人は、そういう人やった …

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私には、理解ができない。

そういう行動の意味。

そういう心。

理由なく 殺す 行為ができる人。

私の母にとって彼女は、人並みでない苦労をして育ててくれた母親。

けれど、そんな自分の母親の醜い習慣を目の当たりにした娘。

娘である母は、そんな母親の行為を激しく憎んでいる。

口をまっすぐに結んで、指でぎゅっ、ぎゅっと虫を押し潰す母親の娘。

そんな母親を語るとき、彼女は怒りで泣きそうな表情になるのを知っている。
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孫の私もやはり、そんな祖母を醜いと思う。 
 
苦渋の道を、とても苦労して必死に生きた女性。

彼女を心から敬う思いがある。

しかし、同時にやはり、彼女の行動のひとつに疑問を抱く。

意味もなく、小さな命を殺すという行為。

それは、とても悲しいこと。
by yayoitt | 2011-08-18 03:13 | 愛する動物のこと | Comments(16)
Commented at 2011-08-19 06:29 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by hari at 2011-08-19 06:56 x
やっこちゃんさらわれた猫の、max が、 trinityで見つかった。保護されました。良かった。とてもうれしいです。
Commented at 2011-08-19 08:34 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2011-08-19 08:35 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by HollyNoahDaisy at 2011-08-19 11:08 x
やっこさん、ごめんなさい。白状すると私、蟻も殺すし、ゴキブリも蚊もハエも叩くし、蚤も潰すんです。

彼らの命を考える前に、自分やうちの犬や猫達の迷惑や被害が先に立ってしまうの。

Daisyのお腹に蚤を見つけたときなんて、憎しみさえ覚えました。私のかわいい仔に何するの!って。

どこでどのように線が引かれているのか。。。犬と虫の間に。。。
Commented by chocorachocora at 2011-08-19 16:40
ナミさん、壮絶な苦労をされてきたんですね。
今の私たちには想像も出来ないほどの

蟻や生き物を平気で殺す姿を見てもちゃんとやっこちゃんのお母様とやっこちゃんたちは生き物の痛みを分かる人に育ったんですね。

Commented by Neko at 2011-08-19 18:43 x
同じ昆虫の枠内でもおっけえなもの、ダメなもの、その違いはなんなんでしょうね。

蝉はおっけえ、でもゴキブリはダメ。
どうして?って聞かれても、明確な答えはなく「気持ち悪い」。
飛ぶから?いやいや蝉の方がよく飛ぶしその際にしっこひっかけるし。
カミキリムシやクワガタ、カブトムシは同じような色、形状なのに大丈夫でもどうしてゴキはダメなんだ。
子供の時、風呂桶の中に落ちてきたのがトラウマなのかもしれないけど(汗)
Commented by coco at 2011-08-20 16:37 x
無用な殺生をしてはいけない。

この間テレビでビルマ戦線を戦って生き残った80台半ばの方の言葉なんですが・・・
「戦争を長くしていると涙がでなくなるんだ・・・。」

ナミさんのその行為はある意味、生きると言う戦争を戦っていたから?
ナミさんが今、現在に生きていたら?

何十年も前のお話ですが義母は猫のあかちゃんをいとも簡単に「川に捨てた。」と言われた時、
心底、何て残忍な事を平気で出来る人なのだろうと驚愕しました。
そして田舎では飼っていた鳥やウサギは食べる為に飼育をしていたのです。

命の大切さ。人生の不平等さ。生きるとは・・・考えさせられました。
Commented by yayoitt at 2011-08-22 03:54
鍵コメ at 2011-08-19 06:29 さん

本当に、そう思います。
想像できないほどの悲しみ、苦しみ。
それを見て受けて育った私の母も、戦争のことは、今でも
しみじみと思い出しては語ります。

彼女は、孫の私から見ても、余り温かみなどは感じられない
冷たい感じのする人でした。

もしかしたら、そういう時代の背景が、彼女をそんな 頑な に
させたのも、あるかもしれませんね …。
Commented by yayoitt at 2011-08-22 03:57
Hari さん

あのネコ、見つかったんですね!!
良かった!!

いったい、どういう経緯があったんでしょう …。
誰かにさらわれた、というのは本当なんだろうか …。

でも、何より無事で良かった!
エジンバラのあちこちにも、色々なネコや、時には犬の迷子の
お願いが貼り出されています。

それを見る度に、胸が痛みます。
彼らのどれくらいが、ちゃんと飼い主さんの元に戻ってるんだろう?

ありがとうございました、嬉しい報告! 
Commented by yayoitt at 2011-08-22 04:06
鍵コメ at 2011-08-19 08:34 さん

言葉で聞くと、やはり驚いてしまいますが、彼女が育った時代、
混沌とした日本の、そういう背景で生きてこられた方の
本当は、それほどの 意味 のない言葉なのでしょうね。

優しいおばあさんの思い出があるのは、とても幸せですね。

戦争という、戦争を知らぬ私たちにとっては想像を絶するような
経験は、それはもう、きっとその人の一生を左右するような
そんな 出来事 であったのだろうと、思います。 
Commented by yayoitt at 2011-08-22 04:10
続きます

私もそう感じます。
私の祖母の、その殺生という行為に、それほどの意味は
きっとなかったのだと思います。

意味もなく殺生する、ということ自体、当たり前でもあったのかも
しれませんね …。

反面教師で、そういう母親の行為を憎む私の母は、小さな虫の
為にも涙を流すような人です。

私であっても、ノーマンと出会う前は、虫や動物の命に対しては
ほとんど関心がなかったものです。

命への愛情を、教えてくれたノーマンとの出会いに、
心から感謝しています。

鍵コメさん。
どうも、ありがとうございます。

素敵な思い出話も共有してくださり、嬉しいです。
Commented by yayoitt at 2011-08-22 04:18
由喜さん

いいえ。
どうぞ、謝らないで下さい。

私だって、去年の夏のキャンプでのブヨの大群は、叩いて
潰していました。

ことにヴィーガン生活に入り、苦手だった虫類も、愛しく感じられる
今ではありますが、やはり、蚊(有難いことにここにはいませんが)
やゴキブリだったら、自分はどうするだろう? と思います。

由喜さんの行動には、どうしてそうするのか? という
理由がちゃんと、ありますから。

ノミは … はい。私も病院では必ず潰します。

私自身、そういう意味で線引きができていません。
でも、血を吸ったり、病気を蔓延させる危険性がある、そういう
命ということで、やはり、殺生しています。

この線引き、とても難しいと思いますが、私の祖母のように
目の前にいるからといって、動く蟻を殺すのとは、まったく、
その行為は、由喜さんの、そして私のと、違うと思います。

あぁ、考えれば考えるほど、難しいですね。

由喜さん。
どうも、ありがとうございます!! 
Commented by yayoitt at 2011-08-22 04:22
Maama

私の記憶する祖母は、温かみの感じられない人でした。
けれど、そういう祖母であるのはきっと、戦中戦後の計り知れない
苦労があるからなのだと、そう思います。

娘である私の母は、実に反面教師で、蚊を殺すのにも、ごめんな
と言ってスプレーをかけるような人です。

そういうのって、興味深いよね。
誰の何を見て、どこでどんな風に 学ぶ のかと。

Maama。
どうも、ありがとうね。 

私も、ノーマンに出会う前は、危害を加えるわけでないゴキブリを
平気でゴキブリほいほいで殺せるような、そんな自分だったよ。

ノーマンとの出会いに、心から感謝してます。
Commented by yayoitt at 2011-08-22 04:28
Neko ちゃん

うんうんうん。
あるよね。
あるんだよね。

由喜さんとも話した 犬猫に危害を与える虫たち 例えば蚊とか
ノミとか … そういうのはやっぱり、自分の犬猫を守るために
殺すという行為は、仕方がないかなって思ってしまう。

だけど、ナメクジとかミミズ、ゴキブリ、クモなど、一般に
見た目が嫌だと、嫌われて殺されることが多い命に関しては
それを許せない自分がいる。

その線引きって、本当に、なんだろうね。
個人個人の線引きではあっても、でも、同じ殺生だものね。

私も、もしもゴキブリが家に出たら …
今、どうするだろう?
ゴキブリにも、愛情を持って、無視できるだろうか?
それも自信がなくてわからない。

すごく苦手だったから。

こういうことって難しいし、同時にとても興味深くもあるよね。
万物を愛するって、やっぱり、そんなことはできないのかも …。
せめて無視したいけど、そう、恐怖心がね。

Neko ちゃん、ありがとうね。
ここは、ゴキブリがいなくて、ありがたいね。
Commented by yayoitt at 2011-08-22 04:42
coco さん

戦争を長くしていると涙が出なくなる …

とても戦慄を感じる言葉ですね。
けれど、それほどまでに、心の感動とか動きを麻痺させてしまうほど
の、戦争というのは、そういう 行為 出来事 なんだろうと
思わざるを得ません。

祖母が、今の時代を生きた人だったら、どうだったのでしょう。
彼女の生きた時代が、虫などの殺生に関して無関心な時代だった
からかも、そうだったら、彼女自身の性格、気持ちとは、その行為は
関係がないのかも … 知れませんね。

昔話でも、動物に対しての日本人の態度は残酷ですよね。
スズメの舌を切り、タヌキに火をつけたり、キツネを絞めて汁に
したり … 自分たちの生活に都合の悪い他の生き物は殺すという
ことに平気だったように、思います。

そういう、時代なのでしょうね。

今、こうして、ある意味、平和な時代に暮らして、動物の命のことを
深く考えられる、そういう機会が与えられていることに、
心から、感謝します。

Coco さん。
本当に、興味深いお話を、どうもありがとうございます。
考えて、感じて、行きたいです。
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