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ただ待つ ということ
金曜の午後、気が付いたら携帯にメッセージが入ってた。

マイケルからだった。

 ああ、魚を買ったかどうかだろうな、今日、魚屋さん、来なかったわぁ ・・・

と独り言を言いながら、メッセージを読んだ。

 Oto-san(おっとさん=マイケルの父)が、
 心臓の痛みを訴えて病院に運ばれました
 念のためだけど、僕も実家に今から行きます


3回、読み直していた。

           ☆     ☆     ☆

仕事を終えて、真っ暗な家に入ると、ノーマンがのそのそ起き上がった。

急いでの短い散歩になったと、掛けなおした電話でマイケルが言っていた。

そのまま、ノーマンと月夜の寒空散歩に出掛けた。

私自身が、落ち着かない気持ちだった。

ノーマンとの夜の散歩は、そんな不安な気持ちを楽にしてくれた。

           ☆     ☆     ☆

夜の8時 ・・・

マイケルからの連絡は、まだない。

携帯から、マイケルの携帯にメールすれば良い。

電話も、マイケルが病院外にいるんなら、掛けたら良い。

聞きたいのなら、知りたいのなら、私から聞けば良い。

           ☆     ☆     ☆

夜の9時 ・・・

携帯にメールを送る

 Oto-san 大丈夫? マイケルも大丈夫?

すると、2分後に家の電話が鳴った。

 Oto-san うん、大丈夫だよ 心筋梗塞ではなさそうだよ
 とりあえず、今晩は入院して、明日血液検査とかで問題なければ退院するよ


まずは ・・・ 良かった。

大好きなおっとさんの、いつもの笑顔が、見えた。
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ノーマンと1人1犬のフラットの中で、受話器を置いたばかりの電話を見つめる。

さっきまでは、この電話が冷たく無口で寂しく感じられた。

だけど、マイケルから連絡を貰った今、その同じ電話はまったく違って見える。
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まだ、携帯電話なんてない頃 ・・・

人々はよく、誰かからの電話を待ったものだ。

手紙を待ったり、自分からは掛けない相手から電話を待ったりしたもの。

時間を気にして掛けられない電話とか ・・・

一緒に住んでる家族のことを気にして掛けつらい電話とか ・・・

その時、誰かに話したいことがあっても

電話を掛けるという行為ひとつが、難しかった時代。
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あの時代、私たちは ただ待つ ということを必死にやってきた。

欲望や思い付きのままに行動できずに ただ待つ ことの苦しさを知っていた。

その歯痒さ、その不安、その切なさ、その恐怖 ・・・。

不便だけれど、それはそれできっと、古きよき時代だった。
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ただ待つ ・・・

ただ待つ ・・・

そして

その音を聞いたときの喜び、緊張、興奮 ・・・

ただ待つ ・・・

そんな時代が、確かにあった。
by yayoitt | 2010-01-09 06:28 | 国際結婚って...
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