猫のはなし おけさのひょう六 
佐渡の国は、相川の庄という所に、畑仕事よりも何よりも踊ることが好きな、
小作人のひょう六がいた。

踊りを見物に来た村人から差し入れられる、食べ物を持って帰る家には、
ひょう六の飼い猫、チリがいた。
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ひょう六は一日中でも踊っていて、その踊りは評判となって、いつも見物人で溢れた。

その踊りの内容は、殿様や代官を茶化したもので、農民たちは皆、喜んでいた。

ある日 ・・・

ひょう六の踊りの噂を聞いた殿様から、踊りを見せるようにとの命令が下った。

そして、翌日に、庄屋と共に城に登ったひょう六は、いつも通りの踊りを踊る。

殿様は、ひょう六に大盃の酒を飲めと命令するが、ひょう六は酒が飲めない。

無理に酒を飲まされるところを、飼っている猫のチリに助けられる。
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しかし、その日から殿様に、踊りを舞うことも、それを見物することも禁止されてしまう。

そんな、ひょう六の元に、おけさという女が踊りを教えて欲しいとやってくる。

2人は共に踊り舞っていたところ、踊りを止めていないと知った殿様の命令で、
家来の刀で、ひょう六は目を潰されてしまった。

切られた血だらけの目を、猫のチリは必死に舐め続ける、すると、傷の痛みは
不思議となくなったのだった。
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一緒に踊っていたおけさは、殿様に連れて行かれて乱暴され、そして船に乗せられ、
どこか遠くへと売られてしまう。

両目を失ったひょう六は、おけさを探し回る。

山の中を探し回る盲目のひょう六の前に、現れたおけさ。

一緒に肩を抱き合って、家へと帰って行った。

その翌日から、目の見えないひょう六の代わりにと、おけさは毎日、踊りに出掛けた。

しかし ・・・

村人の前に現れて踊るのは ・・・

笠をかぶった、猫のチリだったのだ。
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それから ・・・

 猫はのう、殿さまの家来しゅうをなぶるように

 それからも、あっちへこっちへ出てきては踊ったのじゃ

 もちろん猫じゃから、猫の手振りじゃ

 それがかえって評判になり、いつか おけさ猫の踊り ちゅうて

 在はおろか島中に知れ渡ったと

 何年も何年も、猫は踊りをやめなんだ

 目が見えんひょう六は、おけさがおるものと信じとったそうな

 ある年の冬のこと

 “ おけさ ・・・ おけさ ・・・

   おら、おっ死ぬで

   あの世で 踊りながら お前を待っとるでよ
 ”

 雪の晩

 ひょう六の家の縁の下で、老いさらばえた猫が笠をかぶって死んどったそうな
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 猫の踊りはそのまま 佐渡おけさ ちゅうて、今に伝わっとると ・・・

 どっとはらい


(どっとはらい とは津軽弁で おしまい の意)  

                          作 : 手塚治虫

昔から、動物と人間との、その種を超越した愛情の物語は、沢山ある。

そこには、ある 証(あかし) があるからに ・・・ 違いない。
by yayoitt | 2009-03-25 03:27 | 愛する動物のこと | Comments(9)
Commented by ピータン at 2009-03-26 12:18 x
「動物と人間との」
↑人間も動物だよ~。

「その種を超越した愛情の物語は、沢山ある。」
本当ですね。私も↓この場所で看板を読んだとき、しんみりしてしまいました。
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Commented by バデ母 at 2009-03-26 13:26 x
こういう物語で、猫が人間に姿を変えるとか
人間っぽいことするって多くて、
犬が人間になる話って覚えがない気がします。
どちらも人間の身近で暮らしているのにフシギです。
昔住んでいた所の近くに「踊場」って地名があって
そこは昔、夜な夜な猫が踊りを踊っていた場所だと
伝えられていました。
こういう地名になる伝説も、猫が多い気がするなぁ・・・
Commented at 2009-03-26 13:31 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-03-26 13:35 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by chocorachocora at 2009-03-26 15:15
しんみりとした猫と人間の愛情物語ですね。
ひょう六は、戻ってきたおけさがホントは猫だっていうことを分かって欲しかった・・・・もしかして、分かっているけど、気付いてないフリしてるのかも・・・猫の思いやりに騙されたフリをして。

種を超えての愛情・・・
この間「動物奇想天外最終回スペシャル」で、オリックスの赤ちゃんがメスライオンの前で逃げ遅れて、「やられる~」って思っていたら、ライオンは、優しく横に座り、やがて降ってきた雨からオリックスを守り、体温が低くならないように寄り添い、濡れた体をなめてあげた。っていう感動の映像をしていて、とても感動しました。
Commented by yayoitt at 2009-03-27 01:39
ピータンさん

そうですね、人間も動物ですよね。 ふふ
人間と他の動物 ・・・ かな。

セタカムイ ・・・ 見ました。
本当に、犬が耳を立てて遠吠えしてるようですね。
犬がご主人の帰りを待って ・・・ という実話は、実に沢山、
ありますよね ・・・。エジンバラにも、犬のボビーの話があります。
Commented by yayoitt at 2009-03-27 01:43
バデ母さん

そうだね、姿を変える、となるとやっぱり、猫が多いよね。
あと、タヌキとキツネも、人間に姿を変えて ・・・ という話が
多いけど、確かに、犬が人間に姿を変えるというのは、ないね。

やはり、犬は、人間と共に生きる、ということで、
独立して姿を変えてしまうのではなく、人間の傍で暮す、そういう
相棒的な要素が強いからなのかも ・・・。

こういう歴史も、興味深いねぇ ・・・。

踊場 おどりば って読むのかな。

猫が踊っていた ・・・ そこにはどんな話が、あるんだろう。
悲しい踊り ・・・ お祝いの踊り ・・・ 興味深い!!

Commented by yayoitt at 2009-03-27 01:46
鍵コメat 2009-03-26 13:31 さん

ふふふ

なんで、そんな勘違いを ・・・ 爆

あ、ちなみに、週末までいらっしゃったお客様は、東京の方でした。

そうなんだ ・・・。
そっかぁ ・・・。
なんとなく、予想はしていたものの、数字に出されると、
ショックだよね ・・・。

でもでも、より安楽に、残された時間を ・・・ 
今と変わらぬ時間の繋がりを ・・・
重ねて行って欲しいと願います。

今から、もしかしたら急激に、ある日突然、元気が
なくなるかもしれないけれども ・・・。
でも、驚かないで ・・・。きっと、大丈夫だよね。
見守っています。教えてくれて、本当に、ありがとう ・・・。

心から、ありがとう を ・・・。
Commented by yayoitt at 2009-03-27 01:52
chocorachocora さんっっ

本当にね、たまたま手元に入って来た手塚治虫のマンガ本
なんだけど、何度も読んで、毎回、泣けました。

おけさが、本当はチリだと、知っていたのかな ・・・。
知っていたけど、ずっと、おけさと信じる振りをする、そんな
ひょう六の優しさかも、知れないね ・・・。

・・・ 動物奇想天外最終回スペシャル

オリックスの赤ちゃん。
本当だったら、人間の考える常識だったら、おなかを
空かせたメスライオンの絶好の獲物は、早く逃げられない赤ちゃん
だものね、それを、まさか ・・・。

その映像、私も探してみようかな!!
なんて、動物の愛情は、人知をはるかに超えてて偉大なんだろう!!

Maama、とても素敵な話を ・・・ どうもありがとう!!
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